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031:ベンディングマシーン





常々私は思う。
魔法界って非生産的だ。



この間レポートを書いていて思ったんだけど、羊皮紙に羽ペンだよ?
一度間違えたらそこで終わり。さぁもう一回新しい紙で最初から。
あと一文っていうところで間違えてしまった藤代君なんか図書館で悲鳴上げて百合子先生に追い出されてたし。
でもそれは判るよ、うん。
せっかく後一枚ってところまで組み立てたトランプのタワーが風で倒れたようなものでしょ?



アキノ、それ違う」
「え、マジで?」



そんな藤代君を目にしてからというもの、私は孤児院から持参したルーズリーフとシャーペンで下書きをしてから羊皮紙に書くことにしている。
だってあのときの藤代君はマジで悲惨だったし。
ニンジンを食べさせられるよりも悲しそうな顔してたよ。
あーでも渋沢さんに毎日ニンジン食べさせられてるみたいだし、最近は大丈夫になったのかな。食事中に悲鳴も聞こえなくなったし。
その分嫌に静かなハッフルパフのテーブルだけどね。
だけどさ、書き間違えられた羊皮紙が図書室のゴミ箱に溜まっていく内に思うわけよ。
あぁ、なんて非生産的。
だって廊下の灯りなんかランプだよ! 蛍光灯にしろよ! この際裸電球でも文句は言わないから!
ランプなんて揺れるし消えるし夜は暗いし、蛍光灯のほうが何倍も便利じゃん!
コンビニも自動販売機もないから欲しいジュースもすぐに手に入らないし。
携帯電話もないから遠くの人とすぐに連絡も取れないし。
先生と話がしたいー。孤児院のみんなと久しぶりにバカやって騒ぎたいー。
魔法界のいいとろこなんて煙突飛行粉と、一瞬でご飯の現れる魔法と、ふくろう便と、箒と、薬草と・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・結構、ある?
まぁいいや、とにかく私は藤代君を教訓に書いた文字を消す魔法を覚えたけどね。
ありがとー藤代君。やっぱり先人は偉大だよ!



アキノ、魔法薬学のレポート終わった?」
「もちろん終わったよー。一番にやったし」
「じゃあ見せて! お願い! お願いしますっ!!」
「必死だね、藤代君。いいよー見せてあげる」
「やったーありがとっ!」
「藤代君は私の恩人だからねぇ。コレくらいどうってことないよ」
「? とにかくありがと!」



ダダダダダダとものすごい速さで去っていく藤代君を拝んだりしてみたり。
だってさ、彼のおかげで私は過ちを犯さずに済んだんだし。敬わずにはいられないね!



しかし私のレポートを丸写しした彼は魔法薬学担当の桐原先生に多大なる減点を食らうのであった。





2002年12月8日