025:のどあめ





少女はのどあめを一つ取り出して、自身の口へと放り込んだ。
「あーもー応援に声張り上げたから喉が痛い」
隣を歩く少年はそれに嬉しそうに笑いながら。
の声、よく届いてたよ。二点目を僕が決めたときすごく喜んでくれたよね」
「そりゃ当然でしょー。杉原を応援せずに誰を応援しろと?」
「郭とか?」
「絶対ゴメンだね」
少女の手からオレンジ色ののどあめを受け取って、少年も一つ口に入れる。
「大体さーいまさらヨリを戻そうなんて虫が良すぎ。付き合ってたときは散々な待遇しといてさー」
「郭もようやく気づいたんじゃないの? の魅力に」
「それって遅すぎるし」
少女が楽しそうに笑って、少年も笑う。
二人して仲良く帰り道を辿りながら。
今日あった試合のことや、チームメイトのこと、明日の宿題の話なんかをしたりして。
少女が話せば少年が笑い、少年が話せば少女が笑う。
すれ違う人々は可愛らしいカップルに微笑ましいそうに笑みを向けていた。



「杉原、カッコよかったねー」
少女の言葉に少年は細い目を開けて驚き、そして嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。にそう言ってもらえるのが一番嬉しいよ」
「みんな女の子に叫ばれてたね。郭が人気あるのがよく判らないけど」
「そんな郭とつき合ってたのは誰?」
「私ー」
「そんな郭に言い寄られているのは誰?」
「私ー」
「そんなを好きなのは誰?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・杉原ー」
答えなければどうなるか判らない未来を察知して、少女は小さく答えを返す。
少年は満足そうに微笑んで。
「そう。だから郭なんかには渡さないよ?」
「っていうか私、今は誰ともつき合う気はないって言ったよね?」
「うん。でも今のうちから予約しておこうと思って」
ニコニコと笑顔で言われて、少女は困ったように肩を落として。
でも、握られた手を解こうとはしなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・杉原って、物好き」
「そんなことないよ」
「物好きー」
が好きなだけだよ」
そこまで言われたら黙るしかなく、少女は頬を紅くして俯いた。
少年はそんな少女に優しい笑顔を浮かべて。
そうして歩く、帰り道。



次の日曜日にも、少女はのどあめを持って少年の応援に行くのだった。





2002年12月7日