024:ガムテープ
「西城、終わった?」
「うむ、終わったぞ。クンの方こそどうだ?」
「大体終わったよ。あとは封をするだけ」
「そうか。わりと早く片付けられたのだな」
広さ8畳の洋室に所狭しと転がっている段ボール。
詰められた私物。
空になったクローゼット。
何も置かれていない机。
マットレスだけのベッドが何故かもの悲しく見えてくる。
「・・・・・・今日でRマドリードともお別れか」
西城が感慨深げに呟いた。
は穏やかに微笑みながら、茶色のガムテープを取り出して。
「スペインも楽しかったね。この一年でずいぶんたくさんのことを学ばせてもらった」
「李少年が怒っていたぞ。まだ自分は勝負に勝っていないのに逃げるな、とな」
「サッカーを続けている限りまた試合できるよ」
「今度はトヨタカップか、あるいはワールドカップか」
ビーッと長く伸ばしたテープを指で切って。
段ボールに封をする。
スペインでの思い出も一緒に。
「ブラジルは暑いんだろうね」
「西城としてはコーヒーとカーニバルが楽しみだ」
「俺はアマゾン川かな。着いたら一度観光に行こう」
「一度と言わず二度三度でもオッケーだ。むしろ観光せずしてその街を知ることなど出来ないのだからな。より早く慣れるためには色々と出歩くに限るぞ」
「そうだね、何よりもその街を好きになるためには」
減っていくガムテープ。
それに反比例して次なる場所へと思い巡らせ。
先にある、未来。
「さて、用意も出来たことだし宛名を貼って業者が来るのを待つとするかね」
「フロントにも挨拶に行かないとね。それと、Rマドリードのみんなにも」
この一年、共に戦った仲間にお別れを。
いつもより寂しそうな笑みで二人は笑って。
スペインでの部屋を後にした。
積まれた段ボール。
芯だけが残ったガムテープ。
それでも彼らは走ってく。
次の未来へと向かって。
2002年12月6日