020:合わせ鏡





「久しぶりだな、ワカナ。学校の方はどうだい?」
「おかげさまで、マルフォイ。楽しくやらせてもらってるよ」
そう言って二人はニッコリと笑いあった。
端から見れば微笑ましい少年同士のやり取り。
けれど当の本人たちの間には大車輪もかくやという派手な火花が舞っていた。



パーティー用のローブやドレスを着飾った大勢の魔法使いを見ながら、若菜結人はため息をつきたかった。
壁際に立っている自分の隣にいるのはドラコ・マルフォイ。魔法使いの中ではかなり有名な一族の一人である。
正直に言えば結人はドラコのことが苦手だった。
理由は多々あるが、中でも嫌味で、口の立つところ。若菜家とて家柄で負けるつもりはないが、そう対立したい相手ではない。
いつもは英士がコイツの相手をしてくれんのになぁ、などと今日に限っていない親友に心の中で悪口を浴びせながら。
だから、反応が遅れた。ドラコの言葉に。
は元気か?」
「・・・・・・・・・・え?」
は元気かと聞いているんだ」
驚いて隣を見れば、まっすぐにこちらを見ているドラコがいて。結人は小さく肩をすくめて返事を返す。
なら元気だよ。この夏休みは家の模様替えをするって言ってたし」
先日別れた同じ学校の女生徒を思い出して、結人は自覚なしに笑みを浮かべる。
それを聞いたドラコも、同じように柔らかく笑って。
そして同時にハッとする。
お互いが同じように彼女のことを考えて幸せな気分に浸っているということに。
そして対戦勃発。



「そういえば、ワカナ。先日見合いをしたそうじゃないか。インバース家のご息女じゃ断るわけにもいかないだろうな」
「残念だけどその話はお流れになったんだよ。相手にもう恋人がいるらしくってね」
「成る程、体よく断られたわけだ」
「マルフォイこそ学校じゃパーキンソンとかいう女を侍らせてるって聞いたけど? が聞いたらどう思うだろうなー」
「あんな女、僕には関係ない」
は美少女贔屓だし、そういう発言は止めた方がいいんじゃないの?」
「どう言おうと僕の勝手だ。外面を取り繕って一番大切な相手に誤解されるような失態はしたくないからな」
「・・・・・・・・・へぇ。純潔至上主義のマルフォイ家の次期当主からそんな台詞が聞けるなんてスゲー驚き」
「今や魔法使いはほとんどが混血だ。大切なのは本人の能力ということさ」
「でもオマエのお父上はそうは考えないんじゃねーの? どう見たってマグルはお嫌いみたいだし?」
「いざとなれば家を出るまでだ」
「世間知らずの坊ちゃんが一人で生きて行けるほど世間は甘くないぜ」
「独立の意思もないような情けない男に言われたくはないな」
に惨めな生活はさせたくないし。俺の家はオマエのとこと違って純潔じゃなくても全然オッケーだし? 余計なお世話」
「おまえこそ僕とのことに口出しをしないで貰おうか」
「『僕とのこと』? 何ふざけたこと言ってんだか。は俺の彼女になんの」
は僕の恋人になるんだ」
「俺の」
「僕のだ」
「おーれーのー!」
「だから僕のだと言っている!」



端から見れば微笑ましい少年同士のやり取り。
けれど当の本人たちの間には大車輪もかくやという派手な火花が舞っていた。
「・・・・・・・・・つーか、は独身主義者だって公言してんじゃん」
呟いた真田一馬の一言は、どうやら二人には聞こえていないようであった。





2002年12月8日