015:ニューロン
だって絶対無理なのにさ。
なんでそんな無駄なことするんだろう。
勝てないんだから止めちゃえばいいのに。
絶対俺には勝てないんだからさ、サッカーなんて止めちゃえばいいのに。
「・・・・・・・・・勝てなかったら何だよ」
「何だも何もつまんないじゃん。だって勝てなきゃ一番になれないし」
「一番になるためにサッカーしてるんじゃない」
「負け続けて何か得るもんでもある?」
「一番になって何か得られるものでもあるのか?」
一番になって得られるもの?
うーん、自信とか、人気とか、エースの称号とか、スタメンの保障とか。
あ、それと背番号!
エースストライカーの9番!
「そんなものが欲しくてサッカーしてるわけじゃない」
「・・・・・・じゃあ真田は何が欲しいの?」
一番ってこんなに楽しいのに。
誰にも見下ろされなくてすごくすごく気持ちいいのに。
「俺の欲しいものなんて、おまえには一生わかんねーよ」
真田が、笑った。
「第一おまえに勝てば一番だなんて証拠はないだろ」
「何で? だって俺一番じゃん」
「都内だったらな。日本でもそうかもしれないけど。世界に行けばおまえレベルの奴はいくらでもいるだろ」
「だったら真田レベルの奴だってウヨウヨいそうじゃん」
「いるだろうな」
「だったら真田は用なしだね」
「そうだろうな」
「でも俺はサッカーを止めない」
「たとえおまえがいようといなかろうと、俺は一生サッカーを止めない」
「そう、決めたから」
真田は、笑った。
「・・・・・・・・・俺って、真田に関係ない?」
「同じサッカー選手ってこと以外では関係ないな」
「同じFWだよ?」
「だからなんだよ」
「俺、真田より上手いよ?」
「だからなんだよ」
「だから――――――・・・・・・・・・」
無視だけはしないで下さい。
「・・・・・・・・・俺、真田に見捨てられたら死んじゃう」
「あっそ」
「捨てないで、真田。ずっと俺のこと見てて」
「・・・・・・」
「真田が見ててくれれば、俺なんだって出来る。もっともっとサッカーも上手くなる」
「俺だって上手くなる」
「・・・うん。だから一緒に上手くなろ? 一緒に、サッカーしよ?」
「・・・・・・」
「俺、真田がいなくちゃやだよ」
人気も称号も背番号も全部あげるから。
自信なんて、砂で作られた玩具みたいだけど。
それでもいいなら捧げるから。
「・・・・・・・・・おいてかないで」
真田が、笑った。
俺は泣いた。
2003年3月1日