011:柔らかい殻





「俺のものになってよ」
そう言った俺に、真田は目を伏せて力なく首を横に振った。



真田一馬という人間は、東京選抜でFWを務める選手の一人だ。
テクニックは目を見張るものがあるけれど、精神的に弱さも目立ってその所為でいつもライバルの藤代に先を行かれている。
けれど諦めることをせずに追いかけていって。
パッと見そうは見えないけれど、きっと将と同じ努力型のタイプなんだろう。
だからこそ、気になった。
真田一馬という人間の被っている殻に。



いつも真田の近くにいるのは決まって二人の人間。
郭英士と若菜結人。
真田に『親友』と認められたアイツラだけ。
だけど、真田はアイツラにも見せていない部分がある。
俺がそれに気づいたのは多分偶然。
露出してしまった瞬間を、俺が見てしまっただけ。



弱い弱いと思っていた真田は、俺の考えていた以上に強い人間だった。
負けても負けても、諦めない強さにしぶとささえ感じて。
だけど、それも当然のことだったんだ。
真田にはそれしかなかったんだから。



「俺なら、ずっとオマエの傍にいられる」
元から立っていた場所が違うのだから。
俺は郭や若菜ほど真田には近くない。
それは悔しくもあるけれど、喜ぶべきことでもあるから。
「俺なら、真田を一人で立たせることが出来る」
郭にも若菜にも見せられない姿を晒しても、俺はそれを受け止められる。
だって俺はもう知っているから。
隠したがっているオマエの殻の内を、俺はもう愛しているから。
「だから、俺のものになってよ。一生、傍にいるから」
「・・・椎名・・・・・・・・・」
「俺は、オマエを忘れない。嫌いになったりしない。オマエを置いて他の場所にいったりしない」



たとえ真田がサッカーを辞めたとしても俺はオマエの傍にいるから



「・・・・・・・・・俺のものに、なってよ」



零れそうになる涙を堪えている真田を綺麗だと思った。
そっと頬に触れた俺の手に、震える真田を愛しいと思った。
ねぇ。俺、オマエの殻を少しでも壊せた?



俺だけをその殻の内側に。
オマエの全てを飲み込んでやるからさ。
だから誰にも譲らない。
郭にも、若菜にも、誰にも。



泣き濡れる真田を見ることが出来るのは俺だけでいい。



俺は、真田のものだから。





2002年12月8日