009:かみなり





残りはあと4人。私と光宏と渋沢さんと風祭君。
やーもうどうしよっか。いい加減に疲れてボロボロなんですけど。
ゆんゆんとの戦いでローブはめちゃくちゃになっちゃったし、須釜さんとの戦いで足は流血してるし。
もう大変。どうしましょ。
こうしてバッチが無事なのが不思議なくらいだよね。
身を挺して庇ってくださった翼さん、ありがとうございます。
最後まで頑張りますから見てて下さいねー。
でもってティータイムのスコーンをいくつかとって置いてくださいねー。
お腹減ったなぁ・・・・・・。



とか考えてたら廊下の先に影を見つけた。
身長からいって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ。
見るからに石化されている。これはさっき私が藤代君と笠井君にかけた魔法と同じだなぁ。
まだ消えてないってことは殺されてから3分経ってないってことか。
このゲーム、バッチを奪われたら大広間に自動で移動されるようになってるんだけど、獲られても3分間だけは猶予があるんだよね。
魔法は使えないけれど、その間に会った人には遺言(?)を伝えても良いらしい。
被害者がまだここにいるってことは、そんなに時間が経っていないってことで。
つまりそれは近くに加害者がいるかもしれないわけで。
・・・・・・うーん・・・・・・・・・・・・。
とりあえず、石化を解くとするか。
周囲の気配を探って、誰もいないことを確認してから杖を一振りする。
そうしたらあらビックリ☆人間の出来上がり!
「どうしたの、光宏ー。誰に殺られた?」
「渋沢だよ。サンキュ、。あーぁあとちょっとでベスト3に入れたのになぁ」
「私が入れたからそれでいいでしょ。結構いい得点取ってるんじゃない? うちの寮」
「たぶんそうじゃん? 椎名さんもさっき死んじゃったばっかだし。少なくともスリザリンには勝てるって」
「須釜さんがねぇ・・・・・・手強かったよ」
「あ、やっぱ須釜さんを殺ったのってだったんだ?」
「うん。めちゃくちゃ辛かったけどどうにか」
「その足? うわ、スゴイ血が出てるじゃん。ちょい待って」
光宏は自分のローブを破くと私の傷口に巻きつけてくれた。
「・・・・・・・・・何だかヒロインみたい」
「ヒロインなんだって」
「めちゃくちゃ殺しまくってるのに?」
「それでもはレイブンクローのお姫様だから」
クルクルクルクルと巻き終わってとりあえず止血完了。
「ローブ、ごめんね。ありがとう」
「どういたしまして。には是非とも勝ち残って欲しいし?」
「モチロン。じゃあ光宏の残り時間もわずかだろうし、ちょっと協力してくれるよね?」
「それは当然」
二人してニッコリと笑いあった。
ローブの懐から杖を出して構えて。
「ロコモーター・モルティス!」
廊下の角にいる渋沢さんに向かって呪文を唱えた。



呪文が逸らされて近くの壁が抉れる。
ちっ! せっかく光宏にブラインドしてもらったのに。
これだから監督生は忍者なんだよ! あーもうこれで捕まえたかったのに!
またアクションゲームに突入かよ!!
「じゃーね、。頑張って」
「オッケー! ありがと光宏!」
「スコーンは全部食べとくから」
「うっわ鬼だよコイツ!」
光宏の体をぼんやりとした光が覆って、だんだんと姿が薄れていく。
タイムリミットってね。
まぁこっちはこっちで大変そうだし?
渋沢さんか・・・・・・・・。須釜さんとどっちが大変なのかしら。
腕一本で済むといいけどねぇ。



「久しぶりだな、さん」
ニッコリ笑う渋沢さん。やだもう相変わらず紳士なんだから。・・・・・・・・・見た目だけ。
「お久しぶりです、渋沢さん。お元気そうで何よりです」
さんは・・・・・・その足、ずいぶんとヒドイみたいだ。須釜にやられたのか?」
「お察しの通りです」
「須釜もさんの肌に傷をつけるだなんて男の風上にも置けないな」
「でしたら紳士な渋沢さんは私にこのゲームの勝ちを譲ってくださいませんか? でないと私、翼さんに何をされるか・・・・・・」
あー今頃大広間で翼さんのマシンガントークをしている姿が浮かんでくるよ。
戦闘シーンって大広間の巨大モニターに写されてるって言ってたし。
カメラ映りが良いといけど。右のアングルと左のアングルでどっちが良い? みたいな。
女の人は鏡の前で顔を作るらしい。それって便利だよね、写真撮るときとか。
うーん、私も今度やってみようかな。でも一人でそれやるってちょっと怖くないか?
・・・・・・・・・まぁいいや、うん。とりあえずは目の前の状況をどうにかしなくては。
「悪いけれど俺も譲れないんだ。ハッフルパフはみんな割りと早めに殺られてしまってね」
「そうですか、お悔やみ申し上げます」
「いやいやこちらこそ」
「お互い様ですよね、まったく」
「本当だな」
ニッコリ笑いあって。
もうそろそろバトル開始?
早く終わらせてスコーン食べたいなぁ。光宏のことだからあぁは言ってても取っておいてくれてるだろうし。
・・・・・・・・・・・・・・サクサクッと殺っちゃうか。



「エクスペリアームズ、武器よ去れ!」
「フィニート・インカンターテム、呪文よ、終われ!」



同時に仕掛けた呪文は相殺して廊下をめちゃくちゃに破壊してくれた。
あらまぁ綺麗な夕焼け。もう夕飯の時間じゃん。道理でお腹が減っているわけだよ。
壁の役割を果たせなくなった廊下から宙に身を躍らせる。
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」
自分に魔法をかけると私の体はそのまま落ちずに宙に浮いた。
「ペトリフィカス・トタルス、石になれ!」
「フィニート・インカンターテム、呪文よ、終われ!」
すかさず呪文をかけてきた渋沢さんをさらに相殺させて。
「サーペンソーティア、ヘビ出よ!」
呪文を唱えると同時に蛇がボトッという音を立てて廊下に現れた。
それはもう太くて長い蛇が、渋沢さんのすぐ隣に。
この蛇はなに? ニシキヘビ? 大蛇? ヤマタノオロチだったりして欲しいんだけどな、個人的には。
「フェルーラ、巻け!」
私の呪文を受けて蛇がグルグルと渋沢さんの足に絡みつき始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見てるの、ちょっと楽しいかも。
反撃を予想して構えていたのに、何故だか渋沢さんは動かない。
蛇はそのまま大人しく渋沢さんをがんじがらめにしてしまって。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「渋沢さーん?」
声をかけてみた、ら。・・・・・・・・・これがまた。



渋沢さんは杖を握ったまま気を失っていらっしゃった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「そういや渋沢さんって、爬虫類苦手なんだっけ」
ポツリと呟いた言葉に蛇が顔を上げて舌をチョロチョロっとしてくれた。
・・・・・・・・・・・・ごめん、渋沢さん。ナチュラルだったよ。
私ってばヒドイ女だなぁ。やっぱヒロインは無理だって、光宏。



気絶したままの渋沢さんからバッチを取る。
何だかこれって追いはぎみたいだよね。むしろ山賊?個人的には海賊の方がいいんだけど。
まぁいいか。これで残りも一人になったことだし。
蛇がチロチロと舌をひらめかして、獲物を欲しいと言っている(ように見える)。
では差し上げようかな。せっかく出てきてもらったんだし、ちょっとは美味しいものを食べたいだろうしね。
―――――――――――――――――――――というわけで。



「風祭くーん、出ておいでー」
普通に呼んでみたら壊れた廊下の廃材の影で何かが動いたような気配がして。
頭をもたげている蛇をよしよしと撫でた。
「丸呑みは喉に詰まらせるから気をつけてね」
さぁ行って良し!



ニョロニョロニョロニョロニョロニョロ
シャアアアアアアアァァァァァァァァァ
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」



あーこれで無事にスコーンが食べれそうだわ。
叫び声が途切れたのを聞きながら私はやっと肩を落とした。



木田さーん、コーヒー下さーい。





2003年2月27日