006:ポラロイドカメラ
「光っくん! 俺は今日こそ光っくんに勝つ方法がわかった!」
「・・・・・・何言ってんの? 小鉄」
「ふははは! 今日こそ光っくんに『スミマセン、俺の負けです』って言わせてみせる!」
「だから何だって・・・・・・」
「見ろっ! これを!」
ドンッと突き出された手の先に握り締められていたもの。
カラフルな、絵葉書・・・・・・ではなくて。
「・・・・・・写真?」
日生の言葉に小岩は声を大きく荒げて叫ぶ。
「もっとよく見ろっ!」
そう言われてジーッと目を凝らしてその写真を見つめれば。
セーラーの制服姿でカメラへと恥ずかしそうに、それでも満面の笑みを浮かべている少女。
流れる黒髪に大きな目。
可愛らしいと表現するのに十分な容姿のその少女は――――――。
「!?」
「ふはははははは! どうだ光っくん! 参ったか!」
「え、マジで? ほんとに!?」
「そうだ! よく見るがいい!」
「えええええええ!」
奪うように小岩の手から写真を奪取して、顔を近づける。
それはどこをどう見ても日生の将来のお嫁さんで。
「小鉄、これ一体どうやって撮ったんだよ」
「の友達に頼んだ! 光っくんに見せるんだって言ったらすぐに協力してくれたぞ」
「・・・・・・そっかー」
久しぶりに見る少女は一年以上前に別れたときよりも、ずっと綺麗になっていて。
日生の顔が自然と緩む。
「、スッゲー可愛くなってる」
扶養家族の事情から会えない想い人に、見えないと思っていてもニッコリと笑顔を浮かべた。
しかしそれも束の間
「うん。だから、スッゲー男にモテてるぞ」
小岩の言葉にピタリと止まる。
「・・・・・・・・・マジで?」
「おう、マジでだ」
少々顔色を悪くしながら聞き返せば、自信あり気に胸をそらせて答えられ。
日生の周囲が一気に落ち込む。
それを見て小岩はニヤリと笑った。
「でも、全部断ってるけどな」
「・・・・・・・・・マジで?」
「おう、マジでだ」
日生の周囲が一気に上がる。
元々整った顔を嬉しそうに輝かせる日生に小岩も嬉しくなって、そしてハッとして頭を振る。
今日の目的は光っくんを喜ばせることじゃないんだ!光っくんに負けを認めさせることなんだ!と言い聞かせて。
「・・・・・・・・・何て言って断ってるのか知りたい?」
「知りたい」
即答かよ! と心の中でツッコミを入れて。
「じゃあ負けを認めるんだな、光っくん! 今日こそ俺の勝ちだ!!」
「うん、認める。小鉄の勝ちだよ。俺の負け」
「ヨシ! やった! 光っくんに勝ったぞ!!」
「うん、で? は何て言ったのさ」
小岩の喜びもサラリと無視をして尋ねる日生に、勝利に酔っている小岩は満足そうに笑いながら言った。
『私、結婚する人はもう決まってるから誰とも付き合う気はないの。ごめんね?』
小岩の声で言われたはずの言葉は日生の耳に入ると同時に愛しい少女の声へと変換されて。
「・・・・・・・・・・っ」
思いっきり手を握り締めたいのを写真をグシャグシャにしてしまうからどうにか耐えて、日生は身体を折って笑い出した。
「スゲ・・・・・・ッ! やっぱ・・・っ最高! もーめちゃくちゃ好き! これだからマジで好きなんだよな・・・・・・っ!!」
大爆笑しながらそんなことを言われても。
それでも愛しい者を見る目で写真を眺めて、本当に嬉しそうに微笑むから。
これでいいのかな、と小岩は自分自身に納得させることにした。
こうして日生の手帳には少女の写真が入れられるようになり、肌身離さず持っているそれにチームメイトが興味を示すと、日生に多大なノロケを聞かされることとなるのであった。
2002年12月8日