神さまにかくれてキスをする





時間はまるで光の矢のように過ぎ去っていく。特にこの三学期は、柳生にとっても仁王にとってもあっという間の出来事だった。この先何年を生きたとしても、このように甘く密な時間はそうないだろう。他者に隠れて交流を深めることは、どこか背徳的であり淫靡でもあった。仁王が授業中に教科書の影からメールを送れば、次の休み時間には必ず返事が返される。柳生が妹と共に作った菓子を、図書室の奥深い棚の影で食べたりもした。額を触れ合わせるようにして、銀と栗色の前髪が交わる距離にて、囁きながら言葉を交わした。一言で、十も二十も、百も万も理解してくれる相手。だからといって言葉を惜しむのではなく、だからこそ連ねたくなる心をふたりは知った。このひとが、こいつが、一生傍にいてくれたなら。そうしたらきっと、私は、俺は、一生を楽に生きられる。苦しむことなく呼吸をし、穏やかな精神を維持できる。口付けの代わりに手を繋ぎ、互いに捧げるのは感謝と敬愛だった。不思議なくらいに過ごす時間は濃密だった。
「やぎゅう」
「仁王君」
出会いに、心から歓喜する。





ラブラブ蜜月中。
2011年7月31日(title by hazy