09:冥または届かない光
初めて聞いたときに感じたのは、悔しさよりも驚きだった。
そしてそれはすぐに興味へと姿を変える。
ベッドで寝て過ごすしか出来ないこの身をひどく恨めしく思った。
会ってみたいと、願った。
小柄だと聞いた。
まだ150センチくらいだと。
手足も筋肉が目立ってついているわけでもないらしい。
どちらかといえば細身で。
だけど天衣無縫なプレーをする。
そんな一年に自分の部の副部長である真田が負けたと聞いたとき、正直驚いた。
そしてそれはすぐに興味へと姿を変える。
対戦してみたいと、思った。
だけどこの身体は動かない。
彼の元へ、いけない。
「本当に・・・・・・使えない」
白い腕を見下ろして自嘲するように笑う。
以前は逞しい筋肉を具えていた腕も、今ではこんなに細く衰えてしまった。
またラケットを握ることが出来るだろうか。
彼と、戦うことが出来るだろうか。
強く、眩しい、光を願う。
彼の放つそれらすべてが、どうかこの病室まで届くように。
壊れた身体で、乞う。
どうか彼の存在が、僕を照らしてくれますように。
2004年8月23日