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06:土または止まった時間
リョーマが日本に行くって聞いたとき、僕はめちゃくちゃ反対した。
だってリョーマはアメリカジュニアテニスのチャンピオンだ。大会で四連覇してて、五連覇の期待だって背負ってる。
しかも今年からはエレメンタリーじゃなくてジュニアハイに入るんだし、もっと出場できる大会が増えてくる。
むしろリョーマならすぐにプロを考えてもいいんじゃないかって、クラブのコーチが言ってたくらいだし。
それなのに日本に行く? そりゃないよ!
「仕方ないだろ、親父が帰るって言うんだし」
「ナンジローは勝手すぎるよ! リョーマだけこっちに残ることは出来ないの!?」
「無理。母さんも帰る気マンマンだし」
あっさりと断られた。でもそれくらいで引き下がるわけにはいかない。
だってリョーマはアメリカジュニアテニス界のエースなんだ。いなくなるなんてとんでもない!
しかもテニスに関しては後れてる日本に行っちゃうなんて!
「リョーマ、まさかテニス辞めるの?」
まさかまさかと思って聞いてみれば、リョーマは不思議そうに目を細める。
リョーマのこの仕草は『何言ってんの?』って思ってるときの癖だ。
そんなことも分かるくらいずっと一緒にテニスしてきたのに。
「ジャック、何言ってんの?」
「だって日本なんてテニスはそんなに盛んじゃないし。リョーマにとってつまんないよ」
「うん、俺もそう思う」
「じゃあ!」
僕のうちにホームスティでも何でもすればいい。そう誘おうとしたのに。
「だけど日本にも一度行ってみたいと思ってたし。いい機会なんじゃないの」
他人事みたいにリョーマは言った。
「・・・・・・・・・」
僕は口を開こうとして、だけど止めた。
だってリョーマが決めたんだ。リョーマは一度決めたことは絶対に止めたりしない。
だから悔しいけど言っても無駄。
泣きそうになるのを堪えて唇を噛んだら、リョーマが振り返って笑った。
「ジャック、俺がいない間のチャンピオンの座は任せたから」
「・・・・・・リョーマが戻ってきたって返してなんかやらないよ」
「上等」
楽しそうに笑うリョーマは、テニスコートと同じで。
「じゃーね、ジャック。バイバイ」
チャンピオンを失うこととか、ライバルが減ることとか、いろいろあるけど。
でもやっぱり僕にとっては、友達であるリョーマがいなくなってしまうことが悲しかったんだ。
2004年6月10日