男の喧嘩10題(01:きっかけ)
たぶん、簡単なこと。
出会いさえ違えば、自分たちは親友にもなれたかもしれない。
だからといって。
今からではなれないなんて、誰が決めた?
けたたましい目覚し時計の音にリョーマはぎゅっと瞼を閉じた。
しかし耳障りなベルは鳴り続け、睡眠を良しとしてくれない。
苛立ちを感じながらも手を伸ばして手探りでボタンを押す。
ようやく静かになった室内でもう一眠りと布団を被りなおしたとき、リョーマは気づいた。
・・・・・・何かが肘にぶつかったのだ。
カルピンのようにふわふわではない、硬いもの。
そこでリョーマは本日初めて瞼を開いた。
となりには、先日試合した敵チームのエースがいた。
どうやら目覚ましでも起きていない相手を、リョーマはぼんやりと見つめる。
思い切り欠伸をしてみても目の前の相手は消えない。
なのでリョーマは再び目を閉じた。
「・・・・・・寝よ・・・」
呟いて、まもなくすやすやと二人分の寝息が部屋に響く。
黒髪と金髪がシーツの上でさらりと混ざった。
無邪気な寝顔は、リョーマもケビンも年相応に幼いものだった。
2004年12月7日