18.ユーシとガクトと現実行き電車
りんかい線は、大井町や大崎、新宿などターミナル駅を通過するごとに少しずつ人数が減っていく。それでもやはり同業者が多い中、くすくすと微笑ましい笑い声が密やかに車内には満ちていた。彼女たちの視線の先には、運よく座席に座ることが出来たふたりの少年が、互いにもたれかかり合いながら束の間の眠りについている。ガクトの赤い髪がユーシの肩に乗り、ユーシの頬もまたガクトの頭に寄せられている。すよすよと気持ちよさそうに寝ているふたりに、可愛い、と周囲は呟くばかりだ。しかしもしもガクトが起きていたのなら心底不思議そうに呟いただろう。あのギャルゲーっぽいイラストの紙袋を持って、如何にも冬コミ帰りですって主張しながら地元まで戻るのってかなり勇気がいらね? と、電車の中の一部男性を指さして。
しかし今はすやすやとあどけない寝顔を晒して、結局のところ最初から最後まで周囲に美味しい萌えを提供しつつ、ユーシとガクトの冬コミは終幕を迎えたのだった。
地元のファミレスでめいっぱい夕ご飯を食べたそうです。
2011年1月8日