[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。






奉りなさい、救世主です





ぐい、とジャージの裾を引っ張られて手塚は足を止めざるをえなかった。振り返れば相手はいない。少しばかり、否、割合と首の角度を下げれば、強い眼差しの後輩と出会う。生意気か愛らしさか、その境目は曖昧だけれども、手塚にとって頼れる後輩であることは間違いない。身体ごと振り向けば今度はジャージの前を握られた。どうした越前、と問いかける前に、小さな後輩は口を開く。
「ぶちょー。俺、今日誕生日なんです」
「・・・・・・そうか。おめでとう」
「はい。なんで祝ってください」
ケーキ食いたい。ファンタ飲みたい。丸みの残った頬にでかでかとそう描きながら、リョーマは堂々と言ってのけた。お願い光線は強すぎて手塚の眼鏡では遮れない。どうしたものかと思わず言葉を選んでいると、再度ジャージが引っ張られた。
「ひとり300円でも、レギュラー全員が出せばホールケーキくらい買えるでしょ。俺、可愛い後輩っすよね? 今年の全国制覇に貢献しましたよね? 先輩たち、頑張った後輩を労ってやらないほど薄情じゃないっすよね?」
ねぇぶちょーねぇぶちょー。ぐいぐいぐいぐい引っ張られる力は強い。さすがは青学の柱、などと思考を放棄させながらも手塚は揺さぶられるのに耐える。ここで許可を出してやるのは簡単だけれど、そうするわけにはいかない理由も確かにあるのだ。ちらりと、背後の部室を窺う。
今頃室内では、大石や菊丸、不二たちレギュラーが慌ただしくパーティーの準備をしているだろう。ばれないように時間を稼ぐのが手塚の役目。ぶちょーぶちょーと繰り返すリョーマは知らないに違いない。12月24日はクリスマスイブであることよりも、青学にとっては意味のある日になっているのだということを。





最初から祝うつもりだったんです。しかし祝ってもらったら祝ってもらったで、リョーマさんは「当然っすよね」とか言って照れそうです。
2008年12月24日