<彼を起こす有効手段>
「・・・・・・ねぇ」
「くーくー」
「・・・・・・・・・ねぇってば、ちょっとジロー!」
「んー・・・」
「暇なんだってば!せっかく俺が来てやってんだから寝ないで相手くらいしなよね!」
「くー・・・」
「帰る」(出されたファンタを飲みきり、気に入ったらしいチョコレートを複数手に取り立ち上がる。そのまま自分の鞄へ)
「・・・・・・」(ガシッと手がリョーマの足首を捉える)
「・・・・・・何、この手」
「・・・帰っちゃヤー」
「(まだ寝てるっぽいし。寝言なんじゃないの?)ヤーじゃないよ。ジロー俺が来てるのに寝てばっかりだし。これなら家で生臭坊主とテニスやってた方がマシ」
「ヤー」
「帰る」
「ヤー。帰らないで」
「じゃあ俺の相手する?」
「するー・・・。リョーマ好きー」
「俺は寝てばっかで俺を放っておくような恋人はキライ」
「ヤー」
「(だからヤーじゃないって)これなら跡部の方が俺様だけどまだマシ」
「(パチッ)」
「(あ、覚醒した)」
「なになになに!?リョーマいつ跡部と会ったの!?跡部めー俺のリョーマに手ェ出してッ!!」
「俺がモテるのなんて今更じゃん」
「そうだけどー!でもリョーマは俺の恋人だし!」
「相手してくれないで誰が恋人?」
「じゃあ今から遊びに行こう!それで帰ってきてからのんびりしよ!」
「・・・・・・・・・それって、泊まれってこと?」
「うん!」(満面の笑顔)
「・・・・・・・・・」(猫なんだか犬なんだか分からない、と思っている)
「リョーマのお家には俺が電話しとくね。ちょっと待ってて。どこ遊びに行きたいか考えといてよ!」(自室にある携帯電話を取りに軽快な足取りでかけていく)
「・・・・・・まだまだだね」
『あなたと一緒にいられればいい』なんて、そんなこと絶対に言わないと決めている。
言ったら最後、きっとこの恋人は毎回のデートを寝て過ごすだろうし。
まったりするのも良いけれど、沢山の思いでも作りたいから。
「リョーマお待たせ!行こッ!」
伸ばされた手を素直に受け取って。
ちょっとだけ嬉しかったから頬にキスなんてしてみたり。
そうしたら嬉しそうな顔で同じようにキスされて。
そうして出かける、休日の午後。
その後、休日は完全覚醒するようにし始めたジローは今まで以上に学校で眠ることが多くなり、彼の覚醒している姿はますますレアになる。
その代わり、寝言で「リョーマ〜・・・」と呟くたびに鉄槌を食らわせるテニス部正レギュラーの姿がよく見られるようになったとか。
2002年9月22日