<王子様をめぐる結託>
「よし、それじゃあ部会を始めるぞ。まずは神尾、報告してくれ」
「はい、橘さん。えーっと・・・6月11日土曜日、青学は午後一時より練習開始。メニューは飛ばしていいですよね?越前は桃城と組んでストレッチをした後、河村とラリー。そのほか特に二人っきりでペアを組んだってことはありません。休憩中はレギュラーに囲まれて木陰でお休み。その日のファンタ当番は手塚で、団扇当番は不二でした。練習後は桃城のチャリの後ろに乗って帰宅。その後自宅から外へは出ていません」
「その桃城について調べてきました」
「よし、森。報告してくれ」
「朝は6時40分に越前宅へ迎えに行き、帰りは3日に2日はチャリで送っています。毎回ファーストフードに誘うみたいですが、オゴリが高じてか成功率は70%以上です」
「ふむ・・・。今のところ越前と一番接触が多いのは桃城ということか」
「なら私が行くわ」
「杏ちゃん」
「桃城君は私のことも悪く思っていないみたいだし。偶然を装って足止めするわ」
「でも杏ちゃんはそれでいいの?」
「越前君の身を守ることが第一だし、それに桃城君から越前君の情報も聞き出せるしね」
「・・・・・・わかった。じゃあ桃城は杏に任せるぞ」
「了解☆」
「じゃあ次、深司」
「ハイ・・・・・・。6月12日日曜午後一時。越前君は駅前のスポーツ用品店に買い物。そのときレジのオヤジにおまけとしてタオルをもらう。・・・・・・何この変態。赤いリボンでラッピングしといて『おまけ』とかよく言えるよね・・・。越前君にあげようと準備してたのバレバレじゃん。ムカツクなぁもう・・・。呪うよ・・・?」
「深司、その件は後で処理するから先に進め」
「・・・・・・ハイ。結局二時間スポーツ用品店で足止めされ、午後三時に店を出る。その後道を歩いてる最中にナンパされること5回。男が3組、女が2組。・・・・・最後の男がしつこくて越前君が腕を掴まれたとき、氷帝の忍足が現れる・・・・・・」
「「「「「「「忍足!?」」」」」」」
「ナンパ男を追い払い越前君と接触・・・・・・。『偶然会えたのも何かの縁や。お茶でもせぇへん?』と、下手なナンパをする。・・・・・・・・・マジで呪うよ、キミ・・・。でも越前君はオゴリに釣られて喫茶店『あるふぉんと』に入店」
「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」(深司の言った忍足の台詞が声もイントネーションも忍足そっくりだった為、変に感心中)
「頼んだのはバケツパフェ。10分で完食。忍足がここぞとばかりに誘惑するけど、そんなこと一々口に出したくないし・・・。これ、プリント」
「桜井」
「はい」(プリントの束を受け取って皆に回す)
「・・・・・・で、午後四時半に帰宅。その後は裏の寺で父親とテニス。六時半になったところで従姉妹が夕飯だからって呼びに来て、家に戻る。・・・・・・以上です」
「っていうか何コレ!?この忍足って奴今すぐ削除するべきよ!」
「落ち着け、杏」
「でもこの越前への行動は行きすぎです」(石田の言葉に皆頷く)
「・・・・・・よし、明日の部活は忍足への制裁を実行する。各自報復を考えてくるように」
「・・・・・・・・・楽には殺さないよ・・・?」
「そうだな、とりあえずターゲットの明日の行動も調べなきゃな」
「じゃあ内村、森。明日の忍足の動きを頼むぞ」
「「はい、橘さん」」
「それでは本日の部会を終了する。今後とも自分の役割を全うするように。よい結果を期待してるぞ」
「「「「「「「ハイ!」」」」」」」
不動峰は内乱どころか完全な提携体制を敷いている。
犯罪行為をしていなくもないのだろうが、バレるようなヘマはしない。
それが不動峰の男子テニス部なのである。
2002年9月1日