04:みんなで海行こう





「ねぇねぇ真田君、夏休みに海行かない?」
一学期の終業式。通知表ももらって後は帰るだけというところで声をかけられ、真田は顔を上げた。
見ればクラスメイトの女子四名が、楽しそうにこっちを見ていて。
その中の黒髪ロングの女生徒が真田の前に立っている。
「・・・・・・海?」
突然言われたことを反復して聞き返すと、女生徒は楽しそうに笑った。
「そう。サッカーの練習も夏休み中ずっとってわけじゃないでしょ? だったら行こうよ」
ニコニコと嬉しそうに笑いながら女生徒が言う。彼女の後ろでは友人らしい少女たちがクスクスと笑っていて。
どうしようか、と真田は思った。
別に海に行くのは構わない。彼女の言うとおりクラブや選抜の練習も毎日あるわけではないし。
行くのは構わない、のだが。
「何だよ、おまえらだけズルイって! 真田、俺たちとも海行こうぜ!」
悩んでいたところに後ろから圧し掛かられて、思わず真田は「ぐえ」と潰れた声を出した。
机と顔面衝突しそうになるのを鍛えた腹筋で耐え切って、睨むようにすぐ横の顔を見る。
「・・・・・・後藤」
「睨むな、睨むな。それで? いつにする?」
覗き込むようにして続けられ、真田は文句を言うのも忘れて苦笑した。
けれどそれを黙って見ていられないのは、真田を横取りされる形になった少女たちである。
「ちょっと後藤、邪魔しないでよ!」
「そうよ! 私たちが先に真田君を誘ったんだから」
「うっせーな、男同士の友情の邪魔すんなよ」
「何それ!」
ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあ
途端に始まった言い争いに、真田は椅子に座ったままながらも一歩引いた。
どうするべきかと周囲を見回せば、斜め後ろに困ったように笑っているクラスメイトの姿があって。
「榎木・・・・・・」
「すごいね、真田君」
「いやそういうんじゃなくて」
二人して顔を合わせ、ヘラッと笑って。
真田はまだ言い合いを続けている少女と後藤を振り返って話しかけた。



「なぁ、行くならみんなで行こうぜ」



こうして彼らの夏休みの予定は決まった。





2004年5月2日