「こんにちは、ドン・カルバッチーノ。そしてさよなら」
低い声と共に拳銃が一発放たれ、男の命は終わらされた。崩れてきた男の身体を受け止め、髑髏はその肩から向こうを覗き見る。
そこには冷ややかな視線で見下ろしてくる、彼女の主たる男が立っていた。
朝焼けに散る涙
歩く足が速い。いつもは性格からかゆっくりと街を眺めて歩くのに、今は颯爽と前だけを向き突き進んでいく。髑髏はコートを着ることすら出来ず、走ってその後ろ姿を追っていた。
「ドン・ボンゴレ。ボンゴレ十代目」
呼び掛ける声に返事はない。
「すみま、せんでした。貴方のお手を煩わせるなんて。僕が遂行すべき仕事だったのに」
石畳の通りに、皮靴とヒールの足音が響く。
「ですが、情報はよかったのですか? カルバッチーノファミリーの銃器入手経路は、抑えておくべきだったのでは?」
入り組んだ路地を抜ける。早朝にもまだ早い時間、道路を走る車はない。
「ドン・カルバッチーノが毎週フィレンツェに足を向けていることだけは聞き出せました。場所までは喋りませんでしたが、足取りを追えばおそらく分かるはずです」
海から吹く風が二人の髪を揺らす。色素の薄い茶色と、深い黒。
「薬についても吐きました。新薬はすべてファミリー内で製造したもの。まだ市場には大して出回らせていないようです」
返される言葉はない。足取りは変わらずに速くて、追う背中がどんどん遠くなっていく。
「ドン・ボンゴレ」
必死に足を動かして、髑髏は走った。せり上がる気持ちを唇を噛んで堪えながら。
「ねぇ、ボンゴレ」
届かない声が苦しい。
「―――綱吉君・・・・・・っ!」
静かな波の音の中、前を行く足が止まる。距離を縮めたいけれどそれも出来なくて、髑髏の足も止まってしまった。白いコートの背中。もう成長しきった、けれど優しい響きを失わない声が、波に紛れて聞こえる。
「・・・・・・おまえが身体を使わなきゃ手に入らない情報なんていらない」
波の音が聞こえる。
「髑髏が傷つかなきゃ手に入らない情報なんて、いらない・・・・・・っ!」
白い、コートの、背中が震える。堪らずに走って、髑髏はその背中にすがりついた。溢れる涙を拭いもせず、その背中に押し付ける。
昇り始めた朝日が、一つになった影を映し出していた。
珍しく多分両思い。髑髏嬢はツナのためだけに女の子の意識を築くと良い。
2006年9月19日