あたしたちはただ、あんたのためだけに在る。
シビアで夢見がちな君に捧ぐ
ばたんばたんがちゃんという激しい騒音に、扉のこちらで少年は眼鏡を押し上げた。ふわりと雲を思わせる白い髪が揺れる。
「・・・・・・大荒れだな」
「仕方ないんじゃない? ついに決まったらしいから」
「廃棄か」
「その通り」
嵐のような灰色の髪の子供が頷く。同じくソファーに座っていた雨を匂わせる藍色の髪の少年が小さく笑った。
「まぁ仕方ないよな。このご時勢、俺たちの存在は厄介事の火種みたいなもんだし」
「争いごとが嫌いな奴だしね。その理由になる僕たちをそのまま持ってるわけがない」
「・・・・・・だがそれは、俺たちのためでもある」
「知ってるよ、そんなこと」
壁に背を預けていた霧のような銀髪の青年に、灰色の子供はふてくされたように唇を尖らせる。彼らの中では比較的あどけない顔立ちが、そうすることで更に幼くなった。稲妻のように鮮やかな金髪の青年が、満足そうにひとつ頷く。
「巻き込んで利用されたり傷つられたりされたくないからこそ、あいつは俺たちを廃棄することにした。普通の奴じゃこうはいかねぇ」
「優しい人、ですよね」
「だから嫌いなのよ、あの馬鹿っ!」
太陽に近い赤髪の青年の言葉尻に、少女の甲高い怒り声が重なる。赤髪の青年はびくりと肩を震わせた。彼らが振り向けば、つい一瞬前まで騒音を撒き散らしていたドアが開いており、水色の髪の少女が息を荒くして立っている。普段綺麗に整えられている長い髪がぼさぼさに乱れていた。おいおい大丈夫かよ、という藍色の少年の声を少女は叩き落した。
「普段なまっちょろいくせに、こんなときだけ決断力発揮して! 何が『出来る限り争いは避けたいんだ』よっ! 戦えば誰より強いくせに! あたしが絶対力になるのにっ! それなのに、あのへなちょこ!」
「でも、初代以来の器なんだろ?」
「そうよ! だからあたしは、だから・・・・・・・っ!」
ぼろりと、大粒の涙が少女の瞳から零れる。握りっぱなしだったクッションが震える手で投げられ、銀髪の青年が首を動かして避けた。おろおろと赤髪の青年が宥めにかかる。
「な、泣かないでください、大空の」
「うるさいわね、泣いてないわよっ!」
「めちゃくちゃ泣いてるじゃん」
「黙りなさい、嵐の! これは悲しいんじゃないの! 悔しいのよ! あいつがあんまりにも馬鹿だからっ!」
拳を握り締め、華奢な靴を履いている足でだんだんと床を蹴る。
「これからっ! 戦いになるなら絶対あたしが必要なのに! それなのにあいつ、あたしのこと捨てるって言ったのよ!? 『ごめんね』って! あの、馬鹿っ・・・・・・一体あたしが何のために生まれてきたと思ってんのよ! あいつをボンゴレのドンだって認める証のためじゃないのよ! 指を飾るアクセサリーじゃないのよ! それなのに、それなのに・・・・・・!」
灰色の、嵐の少年が唇を噛む。赤髪の、晴の青年が眉根を下げ、銀の、霧の青年は瞼を伏せる。
「『今までありがとう』って! 『ごめんね』って! 『君を戦いの道具にしたくないから』って! 馬鹿じゃないの、あたしがいなきゃボックスだって開けられないくせに! 力が強すぎるから、そこらへんのリングじゃ嵌めた瞬間に壊すくせに! それなのに、あたし無しでどうやって戦うっていうのよ、あの馬鹿!」
金髪の、雷の青年が小さく笑った。藍色の、雨の少年が困ったように首を傾げる。白髪の、雲の少年が仕方なさ気に溜息を吐き出した。
怒りに拳を震わせ、水色の、大空の少女はきっと顔を上げた。愛らしい丸みを持つ頬を涙で赤く腫れさせ、それでも瞳だけは強さを失わずに光を放ち続けている。
「・・・・・・いいわよ。別にボンゴレリングが無くなろうが、あたしたちが守護精であることに変わりはない」
すうっと少女の、少年の、青年の爪先が消え始める。まもなく訪れる騒乱を前に、ついに廃棄が始まったのだろう。七つのリングを泣きそうな顔で見送っているドンの顔がいとも簡単に思い描ける。戦力を手放すだけでなく、ずっと身につけてきた自分たちを切り捨てるのは辛いだろうに、苦しいだろうに。それでも彼は選択した。己の描く平穏と理想のために。
「呼べばいつだって現れるんだから。割ろうが燃やそうが捨てようが、あたしたちは消えないんだから。あんたがいくら拒んだって、あたしたちはずっと傍にいるんだから」
消えていく。それぞれの特性を露にしていた髪が、すべてが、消えていく中で少女は少年の分も青年の分も、力強く叫んだ。
「覚えてなさいよっ! 沢田綱吉!」
不敵な微笑を残し、七人の姿は消えていく。迫り来るリングを巡る争いを前にそれは、ボンゴレファミリーの十代目ボスが選び取った決断だった。
ボンゴレリングはその日、長い歴史に幕を下ろして姿を消した。
何をいきなり擬人化です。ここをクリックで各リングたちの設定に飛びます。
2007年7月28日(2008年1月19日mixiより再録)
【大空のリングちゃん】
属性:大空
持ち主:沢田綱吉(ボンゴレファミリー十代目ドン)
外見は14歳くらいの女の子。水色の長い髪に白くて細い身体。たぶん美少女。今まで一応歴代ボンゴレボスを加護してきたが、本当に認めたのは初代と綱吉だけ。我侭気まぐれ駄々っ子だが、他のリングたちの性能を使えるため中心的存在ではある。綱吉に対してのみツンデレ発動。
「あんたなんか、まだまだ初代の足元にも及ばないんだからっ!」
【嵐のリングくん】
属性:嵐
持ち主:獄寺隼人(ボンゴレファミリー)
外見は10歳くらいの男の子。灰色の髪にちんまいお子様の身体。あえて分類するなら英国風容姿。毒舌でよく喋る。獄寺の馬鹿のひとつ覚えのようなダイナマイト攻撃にいつも文句を言っている。
「おまえ、もうちょっと頭使って攻撃すること出来ないの?」
【雨のリングくん】
属性:雨
持ち主:山本武(ボンゴレファミリー)
外見は16歳くらいの男の子。藍色の髪でスポーツ少年風。性格も山本と似ているため、リングの相性がものすごく良い。戦うことが好きかもしれないので、先陣を切って乗り込んでしまうことも多々あり。
「あ、そろそろバトルの時間? じゃあ俺行ってくるわ!」
【雷のリングさん】
属性:雷
持ち主:ランボ(ボヴィーノファミリー)
外見は20代半ば〜後半。金色の髪の好青年。面倒見が良くて優しく、戦隊物のヒーローや体操のお兄さん風。ランボを弟のように可愛がっており、戦いにおいてもアドバイスを与えて力を引き出している。
「大丈夫だ、おまえはやれば出来る子だよ」
【雲のリングくん】
属性:雲
持ち主:雲雀恭弥(並盛)
外見は18歳くらいの男の子。ふわふわの白髪に眼鏡を着用。冷静で加護している指輪の持ち主と親しくなる気があまりなく、力を貸さないわけではないが喜んで貸しているわけでもない。
「俺を活かせるかどうかは、リング所持者の力量次第だ」
【晴のリングさん】
属性:晴
持ち主:笹川了平(ボンゴレファミリー)
外見は20代半ば。赤い髪の青年で性格は温和、誰に対しても丁寧語を用いる。加護している了平がどんどんと突っ込んでいってしまうため「あわわわわわ・・・!」と慌てふためいている。
「ま、待ってください、了平さーん・・・っ!」
【霧のリングさん】
属性:霧
持ち主:六道骸(黒曜)
外見は20代半ば。銀髪の青年で、無口で寡黙だが静かで優しい。骸のおかしな言動にツッコミを入れることなく少し離れた位置で見守っている。でも歴代で一番おかしな霧のリング所持者だと思っている。
「・・・・・・・・・あいつは、あれが素なんだろう」
何となく]グローブ君は大空のリングちゃんと同年代の少年を想像してます。二人できっとツナを争うんですよ。「役に立てるのはあたしよ!」「・・・俺だ」みたいな。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました!