3. 雲雀恭弥の夢枕に立ってみる。
了平の元に挨拶に行くと、「ボンゴレと京子は極限に任せろ!」との言葉を頂いてしまった。頭が上がらない。上がらなすぎる。ありがとうございます、お義兄さん。頭を低くして礼を述べた綱吉に、了平は「沢田は俺の義弟だから当然だ!」と笑った。出会ったときからこの瞬間まで、本当に太陽のような人だった。
ランボの夢に出てみると、膝を抱えてぐすぐすと泣いていた。夢だからか、五歳から二十歳まで一年ごとのランボが円を描いて体育座りしており、綱吉はかなり引いた。しかしすぐに発見され、十六匹のランボに駆け寄られ、抱きつかれる。小さなサイズはまだいいが、自分より背の高くなっていた二十歳のランボの力は強く、綱吉は窒息しそうだった。だけど全員の背中を撫でて、綱吉は一晩を明かした。
そしてついに雲雀の夢にお邪魔してみた。チャックを開けて顔を出した瞬間、トンファーが上から降ってきた。痛い。死ぬ。死んでるけど!
「馬鹿じゃないの、君」
涙を堪えてじんじんする頭を押さえていると、雲雀がすぐ目の前に立っていた。卒業してもうすでに十年近く経つというのに、何故か学ランを着ている。腕には懐かしい風紀の腕章。雲雀さんだぁ、と思った綱吉は、自分も制服を着ていることに気づいてちょっとばかり感心した。
「馬鹿じゃないの。何で僕の許可も出ないうちに死んでるわけ」
「すみません・・・」
「謝って済むなら風紀委員は要らないよ」
「仰る通りです・・・」
謝らなくても済まないのが風紀委員だった気もするが。うっかり綱吉がそんなことを考えると、「何か言いたいことでもあるの」と聞かれて必死に頭を振った。見上げた雲雀はどこか幼い。懐かしい風体をしている。背中を伸ばし、綱吉は姿勢を正した。
「雲雀さん。今までありがとうございました」
まっすぐに目を見れるようになったのは、果たしていつの頃だっただろうか。並盛の脅威と怖れられている雲雀が存外に分かりやすく、子供のような人だと気づいたのはいつの頃だっただろうか。怖かったけれど、憧れてもいた。その潔さにいつだって見惚れて、その背を眺めた。
「お世話になりました」
「そう」
「ありがとうございました」
「・・・・・・もういい。いきなよ」
目に感情が出る。それに気づいたのはいつの頃だったか。自然と恐怖は尊敬に変わり、傍にいるのも緊張しなくなっていた。雲雀さん、と綱吉は笑いかける。
「俺、雲雀さんのこと大好きでした」
だからどうか、あなたはそのままに。そう願えば、「僕は僕の好きなように生きるよ」と返される。そんなところがまた雲雀らしくて、綱吉は手を振って夢を後にした。
君、ほんと、何、勝手に死んでるの。
2007年11月18日