2. 山本武の夢枕に立ってみる。





山本は大丈夫だろうと思っているが、綱吉は一応彼の夢枕にも立ってみた。むくむくと膨らむ山本の夢のチャックを下ろし、「お邪魔します」と頭を下げてから足を踏み入れる。振り向いた山本はぱちりと目を瞬いたけれど、すぐに歯を見せて笑った。中学時代から綱吉の大好きな、爽やかな笑顔である。
「よぉ、ツナ!」
「山本」
「獄寺が夢にツナが出てきたって言うからさ、俺のところにも来てくれるかもって待ってたんだ」
来て良かったと綱吉は思った。ほらここ座れよ、といつの間にか出てきていた座布団を叩かれて腰を下ろす。次の瞬間にはちゃぶ台とお茶も出てきた。山本の夢の中なので、山本の欲しいものがぽんぽんと出てくるらしい。それで、と山本が話し続ける。
「俺も獄寺と一緒に、ツナの守りたかったものを守ればいいのか?」
うん、と綱吉は頷いた。
「ごめん、山本。こんなこと頼んじゃって」
「何だよ、水臭いな。俺はツナのダチだろ? ツナの頼みなら何だって引き受けるぜ」
こんなときでも山本は爽やかだ。マフィアをごっこ遊びだと思っていた頃から、ずっとこのおおらかさに救われてきた。野球選手として有望だったのに、その夢を捨ててまで自分についてきてくれた彼に、どんなに感謝したか判らない。一番の親友だと思っている。思ってはいるのだが。
「でさぁ、ツナ。物は相談なんだけど」
「ん?」
「神様をぶった切ってツナを生き返らせてもらうってのは出来ないのか?」
・・・・・・親友だと、思ってはいるのだが、時折山本は、綱吉の理解の範疇をひょいひょいっと飛び越えていく。笑顔でそんなことを言わないで欲しい。爽やかだから余計怖い。自分とマフィアが山本をこんな風に変えてしまったのかと思うと、10年バズーカで高校時代に戻り、死ぬ気で野球の道に進ませたいと思わずにはいられない。後悔しすぎてる。
「・・・・・・ごめん、山本」
「何でツナが謝るんだ?」
いやもうホントいろいろごめんなさい。心底不思議そうに首を傾げる山本に、綱吉は夜明けまで謝り続けた。





変なツナ。俺はおまえと会えて幸せなんだぜ?
2007年11月18日