1. 獄寺隼人の夢枕に立ってみる。
一人につき、与えられたチャンスは一回、一晩のみ。しかしいつまで経っても獄寺が自分の棺から離れないので、綱吉は最初なのに最後の手段に出ることにした。最期かもしれない、なんて思いながら神様がレンタルしてくれた「強制おやすみハンマー」を獄寺の後頭部に振り下ろす。あ、俺と同じ死因になんないよね? なんてちょっとだけ心配になっていると、すぐに獄寺の夢が始まり、綱吉はチャックを開いてそこにお邪魔した。
「獄寺君」
振り向いた獄寺が、自分を確認すると滝のような涙を流し始める。そしていきなり土下座したので、綱吉はやっぱりと思いつつも苦笑した。
「十代目・・・っ! 十代目、十代目、十代目ぇ・・・っ! お、お守りできず申し訳ありませんでした! この獄寺隼人、かくなる上はこの腹を掻っ捌いて!」
「ああ、それはいいから。そんなのいいから獄寺君、俺の話をよく聞いて。いい? 絶対に俺の後を追ったりしちゃ駄目だよ? 獄寺君は生きて、幸せになって」
「そんな! 十代目のいない世界なんて、俺には何の意味もありません!」
「そんなこと言わないで。獄寺君には、俺の守ってきたものを守り続けて欲しいんだ。並盛にボンゴレ、大好きな人たち。俺はもう守れないから、獄寺君に頼みたい」
「十代目・・・・・・」
「獄寺君も俺が守りたかった一人だよ。だから絶対に後を追ったりなんかしないで。いい? 獄寺君が元気に生きていてくれないと、俺も安心できない」
思い切り獄寺から自分への忠誠につけ込んでいるが、こうでも言わないと後を追ってきそうでどうしようもない。綱吉自身、それは本意ではないのだ。頼むよ、ともう一度言えば、呆然と土下座しながら見上げてきていた獄寺が、ばばばっと己の涙を両腕で拭った。そしてにかっと、赤い目で笑顔を浮かべる。
「分かりました! 十代目の遺したものは必ず俺が守ってみせます! だから十代目は安心してお休みください!」
無理しているのは一目瞭然だったけれど、何度もこの笑顔に励まされてきた。だから綱吉もうん、と頷く。
「今までありがとう、獄寺君」
「十代目・・・っ! いずれ俺が死んだときは、必ず十代目の元に馳せ参じます! だからそのときは・・・」
「うん。また俺の右腕になってくれると嬉しい」
ありがとう、獄寺君。綱吉がそう繰り返すと、獄寺は再び涙をぼろぼろと零し始めた。十代目、十代目、と何度も綴られる呼びかけに、綱吉は夜明けまでうん、うん、と頷き続けていた。
十代目に会えたことが、俺の人生で最大の喜びです!
2007年11月18日