ひばたん
五月七日、綱吉が並中に登校すると、何でか風紀委員に囲まれた。校庭の中央に黒い塊。これがスーツのマフィアさんじゃないことを喜ぶべきか。そんなことを考え、綱吉はいやいやと首を振る。最近何だか判断基準が可笑しなことになっている。何が問題なのだろう。ヴァリアーかリボーンかそれとも骸か雲雀かXANXUSか。雲雀。そう雲雀。風紀委員に囲まれる=雲雀恭弥。あぁやっぱり俺って最悪。何で今日に限って獄寺君や山本と一緒に登校しなかったのだろう。綱吉が蒼白で己の行動を悔やんでいると、やはり御大が現れた。心なしどころではなく現実として周囲の生徒たちが五メートルは離れていく。誰か助けて、と震える綱吉の前に仁王立ちし、雲雀は学ランの下で腕を組む。
「一昨日」
「は、ははははははいっ!?」
「何の日か知ってる?」
問われ、綱吉は考える。今日は五月七日、月曜日。なので一昨日は五月五日。いわずと知れた子供の日だ。それくらいは綱吉だって知っている。息子は綱吉しかいないはずなのに諸々の事情から子供の多くなっている沢田家では、どこから出てきたのか見事な五月人形が飾られた。柏餅も食べた。鯉幟も大空をはためいた。大空で思わず首から提げているリングを思い出してしまって僅かに嫌気が差したけれども、ええと、何だ、五月五日。何の日なんだろうと考えて綱吉は首を傾げる。その間もじっと雲雀の視線は自分に注がれていて、まるでカウントダウンされているようだ。雲雀が問うところから、きっと彼に関係のある日だったのだろう。ぴこーんと超直感が働いた。
「え、えーっと・・・・・・お、おおおお誕生日おめでとうございました・・・?」
「『ました』」
「おめでとうございまっす!」
勢いがつきすぎて語尾が可笑しなことになった。しかし超直感は合っていたらしく、雲雀の視線が少し緩んだ。じゃあはい、と差し出された手は何だろう。
「貢物は?」
「せめてプレゼントって言って下さい!」
突っ込みを入れてから、綱吉は自分のこの体質を恨んだ。差し出された手を見下ろしてみると、骨ばった指は意外にもごつく、手のひらにはうっすらと傷もある。顔立ちや容姿からして白魚のような手をしているのかと思っていたのだが、やはり喧嘩しているだけはあるらしい。それでも形の良い手には違いないのだが。思わず「お手」をしそうになり、綱吉は思い止まった。危ない危ない。自分をプレゼントしてしまうところだった。
「ひ、雲雀さん」
「何」
「プ、プレゼント、欲しいんですか・・・?」
「くれるなら貰ってもいいよ」
周囲を風紀委員で囲ませておいて、手まで出しておいて、この言い草はないだろう。綱吉だけでなく周囲の生徒もそう思っただろうが、誰一人反論できる者などいない。変なところで変に素直な人だと綱吉は雲雀を評した。とにかくプレゼントをあげないと雲雀は引いてくれそうに無い。しかしあげれるようなものなど何も無い。出かけにランボがうるさかったので持っていた飴はあげてしまったし、さすがに現金を渡したら雲雀だって怒るだろう。どうしようどうしようどうしようと綱吉は必死で考えた。そして結論に達した。
「沢田綱吉っ! 雲雀さんのために心を込めて歌わせて頂きまっす!」
宣誓してみたが、やっぱり語尾が可笑しなことになってしまった。ふぅん、と雲雀は小首を傾げる。
こうして始業開始五分前まで、綱吉は並盛中学校校歌をひたすら歌い続けたのだった。
ハッピーバースデーの歌じゃなく校歌だったため、雲雀さんご満悦。
2007年5月7日(2007年6月30日再録)