勝手にWJ(REBORN標的118)





見上げる空はすっかり暗くなってしまっている。山である修業場からは家じゃ見られない数の星が眺められ、夜は静かで美しい。けれど綱吉の心は晴れなかった。月にかかる薄雲にさえ、不安をかきたてられてしまう。
「・・・・・・雲雀さん、大丈夫かな」
無意識の内にこぼれた呟きを拾い、リボーンは小さな肩をすくめる。今日中に、正確に言えば雲のリング戦が終了するまでに零地点突破を会得しなくてはならないのに、ここへ来て綱吉の気は散りっぱなしだった。その理由が分からないでもないので、リボーンは体罰のため殴るはずだった手をスーツのポケットに戻す。
「雲雀を信じてないのか?」
「・・・信じてるよ。雲雀さんは強いし、あの人が負けるところなんて想像つかない。・・・だけど」
綱吉の顔が曇る。その明確な懸念にリボーンは心中で片眉を上げ、修業の共であるバジルは心配そうに綱吉を窺う。
しばらくうつむき、何かを堪えるように唇を噛み締めていたが、泣きそうな表情で綱吉は顔を上げた。
「なぁ、リボーン。あのゴーラ・モスカって奴・・・・・・本当に、人間なのかな?」
ぴくりとリボーンの眉が動いた。
「本当は、人間じゃなくて機械だったりしないかな」
「・・・・・・何でそう思う?」
「・・・・・・夢を」
必死だった綱吉の顔が、くしゃりと泣きそうに歪んだ。
「夢を・・・・・・見たんだ」



倒れ伏していた雲雀。彼の額を伝う赤い血。
弾丸を放つ五指。狙いを定めるゴーラ・モスカ。
規則正しい呼吸音。拡大される目。
分厚い硝子の向こうに、精密な機器を見た。

彼らの背景には、無数の星が瞬いていた。
―――まるで、この空と同じように。



蒼白な顔で話された夢に、バジルが息を呑む。
綱吉はすでに確信していた。ゴーラ・モスカは人間ではない。それこそ彼の超直感が告げている。
だから雲雀が心配で堪らなかった。彼が強いと知っているけれども、それでも。
「・・・・・・確か、イタリア軍からマフィアに秘密裏に流された機械があったな」
リボーンの呟きは小さすぎて二人までは届かなかった。彼は何一つ悟らせることなく、いつもの顔で綱吉を見上げる。
「雲雀が心配なら、さっさと零地点突破をマスターしろ。それが仲間を守ることに繋がるんだからな」
「・・・・・・分かったよ」
はぐらかされた気もするが、リボーンの言うことは正論なので綱吉もしぶしぶ頷いた。立ち上がり、ズボンをはたいて埃を落とす。制服はすでに泥だらけに近かった。額に炎を宿そうと意識を集中させる彼を、再度リボーンが呼ぶ。

「ツナ、今日から見た夢はすべて俺に報告しろ」

何で、と綱吉は目を瞬いたけれど、家庭教師のあまりの迫力に意味も分からず頷いた。
リボーンの眉間には、深い皺が一本、はっきりと刻まれていた。





ゴーラ・モスカの目の中の機械までしっかり夢見たツナに着目しました。第二のブラッド・オブ・ボンゴレの開花とか、面白そうだなぁと。
2006年10月23日(2006年11月17日再録)