ダンスパーティーは終わらない!
一体どのくらい膝を抱えていたのか。何秒、何分、もしかしたら何時間かもしれない。己を抱きこんでいた腕を動かせば痺れてどこかぎこちなかったし、瞼は腫れ上がって重たい。立ち上がろうとしてふらついて、思わずぺたりと砂浜に四つん這いになってしまった。ほろりとそんな自分に笑ってしまって、笑えることが嬉しくて、今度は気合を入れて立ち上がる。太陽はすでに空へと姿を現して、円は少しだけ遠く小さくなっている。振り向けば、侘助も理一もそこにいてくれた。からかうように歪められる唇が、優しいことを知っている。
「もう泣かないのかよ?」
にやにやと尋ねてくる侘助に、涙で乾いた頬が綻んだ。
「はい。あの、ありがとうございました」
「俺たちは何もしてないよ。あえて言うなら、可愛い妹分にワンピースを贈ったくらいかな?」
理一が目元を和らげ、今度こそ健二も素直にその言葉を受け取ることが出来た。短すぎるワンピースも、初めてのふわふわの髪型も、涙で崩れてしまったメイクも、山ほどのファーストフードも、車内の楽しすぎる会話もハイテンションも、すべてが励ましだったのだ。分かってはいたけれども、今になってようやく素直に受け止めることが出来る。くすぐったくて照れくさくて、それでも健二の心がぽかぽかと熱を持つ。歩み寄り、三人並んで階段を上がった。砂を払い乗り込めば、スムーズに車は発進する。
「お腹減っただろう? 朝ご飯でも食べに行こうか」
「この時間にやっているお店だと、ファミレスですか?」
「何言ってんだ、ひつまぶしだろ。手羽先、味噌カツもいいな」
「いやぁ、やっぱり小倉トーストじゃないか?」
「きしめんや味噌煮込みうどんも有りだろ」
「食べ放題が当たり前のモーニングサービスも試してみたいな」
「えーと・・・」
つらつらと羅列される食べ物の共通点を見つけて、健二ははたと我に返った。後ろから運転席を覗き込んでみれば、再び高速に乗った車は、スピードがゆうに時速100キロを超えている。もしかして自分が寝ていた夜の間も、彼らはこの勢いで走り続けていたのだろうか。だとしたら先ほどの海は、間違いなく東京湾ではない。
「あの・・・この車って、どこに向かってるんですか・・・?」
恐る恐るの今更の問いかけに侘助と理一は振り向き、僅かなはずの血の繋がりで、実にそっくりと笑ってみせた。
「「もちろん、名古屋だけど?」」
ぽかんと口を丸くした健二の背後で、富士山が朝日を浴びて輝いている。
結局、朝ご飯が食べ放題のモーニングサービスになりました。
2009年10月18日