年末勝負!





チーンというエレベーターの開閉音は、戦闘開始の鐘の音に等しい。テレビ局にしては珍しく先人がひとりしかいなかったエレベーターに、不破尚は唇を引き結んで乗り込んだ。すっと目を細めた京子が同じく黙ったままボタンを押して、ドアが閉まり一階に向かって降り出す。爆発的ないざこざによって関係は捻じ曲げられたが、幼い頃から十年以上を共に過ごしてきた彼らにとって沈黙は苦ではない。けれど言ってやりたいことも山ほどあるのが、今のショータローとキョーコの現状でもあった。
「・・・・・・何でおまえがこんなとこにいるんだよ」
「・・・・・・それはこっちの台詞。あんたが何でこんなところにいるわけ」
「レコ大の収録に決まってんだろ。今年の最優秀賞が誰だかも知らないのかよ」
「お生憎様。私に知られてないなんてあんたもその程度のものなんじゃないの」
「で、おまえは何でこんなとこにいんだよ」
「『DARK MOON』の大晦日スペシャルの収録に決まってるでしょ」
「あー? まだ撮り終ってなかったのかよ」
「はっ、馬鹿じゃないの。とっくに終わってるわよ。今日のは前振りのCM分だけよ」
「まぁ視聴率は俺の出る紅白の方が上だろうしな。せいぜい無駄な努力をしろよ、新人さん」
「敦賀さんとあんたじゃ勝負なんて見えてるわよ。新年早々お気の毒にね、松太郎さん」
ちらりとした視線がぎらりに代わり、冷ややかだった応酬が熱の入ったものに変わるのは早い。女には手を挙げないが身上のショータローだからこそ殴り合いには発展しなかったが、キョーコの怨念は絡みつくようにして精神攻撃を加える。六階から一階に降るまでの短い間だというのに交わされた言葉は数え切れないほどで、このテンポの良いやり取りも長年の付き合いが生み出すものだと彼らは気づいてもいなかった。チーンと鳴った開閉音が戦闘の終了を告げる。心なしかボロボロになった有様でエレベーターを飛び出たショータローは、捨て台詞のごとくキョーコを指差して大声を張り上げた。これまた昔から慣れている命令口調で。
「いいかっ!? 明日は絶対にレコ大と紅白を見ろよ! この俺の活躍をとくとその目に焼き付けろ!」
「見るわけないでしょ、ばーかばーか馬鹿ショータロー!」
「死んでも見ろ! 見なかったら新年早々おまえの希望芸名が『プリンセスローザ』だったことをテレビで告ってやるからな!」
いーっだ、と二人して子供のように睨みあって再びエレベーターのドアが閉まる。京子も本当は一階で降りるはずだったが、同じ階で降りることすらプライドが許さなかったため逆戻りだ。再び六階のボタンを押して、エレベーターは上へと昇り始める。ああもうあいつむかつく、と同じことを同じ瞬間に思っている彼らは、やはり長年の付き合いが身に沁みた幼馴染なのだった。





で、多分お互いに自分の番組のCMの間に「暇だから!」とか言いつつ見てたりしそう。
2008年12月30日