ロケット団には定期的に訪れる波がある。
「ああああああっ! あたしってばこんなところでピカチュウなんか追っかけてる場合じゃないのよ! ピカチュウより旦那を捜さなきゃ! 今年であたし幾つ!? 何歳!? まずいわよ、早くしないと適齢期逃しちゃうわよ! ピカチュウなんか追っかけてる場合じゃないわ!」
自慢の赤い髪を振り乱して突如叫び始めたムサシに、ニャースは「また始まったにゃ」と無い肩を竦める。
「今すぐ旦那捜さなきゃ! あたしってば美人だしスタイルいいし訓練所じゃエースだったし、大丈夫、引く手数多! 今ならまだ間に合うわ! 金持ちの旦那をゲットするのよ! モンスターボールでゲットよ! 見てらっしゃいジャリボーイ、じゃなかった金持ちイケメン! 『君に決めた』よ! 『ゲットだぜ』よ!」
空のモンスターボールを握り締め、天に向かって宣言する様は見事なくらいに男らしい。容姿は確かに美女でくくれるのかもしれないが、中身に無理がありすぎる。
「金持ちのイケメンをゲットして美味しいもの食べて暮らすのよ! 雪なんかもう食べなくていい生活を送るんだから! 綺麗なドレス着て毎日ダンスパーティーよ! お嬢様になるの、あたし!」
うっかり悲惨だったらしい貧乏な少女時代のエピソードを知ってしまい、ニャースはそっと爪で瞼を押さえる。今のロケット団の食生活は、雪よりはマシ程度なのだが。
「そうと決まればこんなところでピカチュウの観察なんかしてらんないわ! 今すぐ行かなきゃ婚期を逃す! コジロウ、ニャース、後は頼んだわよ! サカキ様にも適当に言い訳しといて!」
とんでもない事を言い残して、無駄な運動神経の良さを活かして逃亡を図る。ぎらぎらと光る目は間違いなくハンターだ。ポケモンを仕留めるとき以上の剣幕に、もはや何も言うことも出来ない。「いい感じー!」という雄叫びだけがドップラー効果で残された。ニャースはぽん、とコジロウの肩を力なく叩く。
「・・・・・・頑張るのにゃ」
アプローチどころか愛の狩人と化したムサシを引き止めることも出来ず、ポケモンに励まされるコジロウ、2X歳の青春だった。
飼い馴らせ、ロケット団!
(好きです、ロケット団。ムサシ←コジロウで。)
2007年8月22日