【 『レッドさんが伝説ポケモンを手懐けているようです。』を読むにあたって 】

○ 原作ゲームのレッドさんではなく、二次創作から派生したpixivレッドさんによるお話です。
○ 苦手な方はご覧にならないでくださいね!

アニメ版主人公のサトシは、ゲーム版主人公のレッドがモデルだそうだ。→ つまり、レッドが映画サトシのように伝説ポケモンと出逢うという可能もないわけでもなくもないのではないか? → よし、それじゃあやってみようじゃないか。個人的嗜好によりpixivレッドさん、出番です!
そんな感じで好き放題やりましたので、何でも大丈夫という方のみお付き合いくださいませ(^o^)丿
注意書きを無視して閲覧し、気分を害されても責任は負いかねますのでご了承ください。
それでは何でもいけるという方のみお付き合いくださいませ!

▼ GO!




















レッドさんが伝説ポケモンを手懐けているようです。





シロガネ山の山頂で三年間も半袖で過していた、大馬鹿者にも程がある幼馴染がついに下山した。ヒビキやコトネという成長過程にいるポケモントレーナーの存在を知り、挑戦者を待っているだけでは駄目なのだとようやく理解したらしい。ポケモンバトルも日々進化しており、時折訪れるトレーナーたちから聞いて、新たな技なども気になっていたのだろう。ついにレッドは下山した。麓のポケモンセンターで彼を出迎えたグリーンは、そりゃあ言いたいことは山ほどあったし一発殴ってやろうかとも思っていたけれど、情けないことに口に出来たのは「おかえり」という一言だけだった。赤い瞳を丸くした後に帽子のつばを引き下げ、「ただいま」とレッドも呟き返し、十六歳にもなる男二人が頬を赤く染めてそっぽ向きあったという事実は、今思い返しても恥ずかしいものである。
とにかく下山したレッドを、グリーンはマサラタウンへ連れ帰った。旅に出て以来一度も連絡を寄越さなかった息子に、どれだけ母親が心配していたのか。道程でひたすらグリーンはそれを説き、おばさんにちゃんと顔を見せろ、とうるさいくらいに言い聞かせた。分かったよ、グリーンしつこい。口の悪い幼馴染を叩いて、グリーンはレッドを彼の自宅へと放り込んだ。詳しい再会の様子は知らないけれど、翌日、庭で洗濯を干していたレッドの母親に、ありがとう、と言われたからグリーンは間違っていなかったのだろう。
それからレッドはしばらくの間、家でごろごろしたり、近くの森で野生のポケモンと戯れたり、グリーンの祖父であるオーキド博士の研究所に顔を出したりと、気ままに過ごしていたらしい。グリーンがジムリーダーを務めるトキワジムにも何度か訪れ、その度に正面から入ってきてはトレーナーたちをピカチュウ一匹で倒しまくり、グリーンは部下たちの傷心を何度慰めることになったか分からない。おまえなぁ、と溜息を吐き出せば、返ってくるのはいつだって「バトルしようよ」という一言で、グリーンはとことん幼馴染のバトルマニアぶりに呆れたものである。
そうして三ヶ月を過ごし、レッドは再び旅に出た。今度はちゃんと「いってきます」と言っていったあたり、少しは成長しているのだろう。どこに行くかは決めてない、と言っていたところは相変わらず駄目駄目だったが、今回はポケギアを持たせたため以前より不安は減っている。ポケギアには登録してある相手と電話できる機能がついている。使い方については口を酸っぱくして説明したし、最低でも二週間に一度は連絡を入れろと、グリーンは耳にタコが出来るくらい言い聞かせた。なので大丈夫だろうと思っていたのだが。
「やっぱりあいつ、馬鹿だろ・・・!」
ポケギアをみしみしと音が鳴るほど強く握り締めて、グリーンは唸った。レッドが旅に出てから二週間、未だ音沙汰はない。あの野郎、とグリーンが苛立ちながら電話をかけたところ、無機質な声が告げたのは「このポケギアは電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません」というアナウンスだった。あいつ、充電してねぇ。グリーンは幼馴染の行動パターンがいとも簡単に読めてしまい、もはや項垂れるしかなかった。何であいつ、あんなに馬鹿なんだ。ポケモンバトルしか能がないのかちくしょう。
そうして再びレッドと連絡が取れなくなって、三ヶ月。頭の隅っこで常に幼馴染のことを心配したり貶したり心配したりしていたグリーンの元に、小さな小包が届いた。送り主の欄に書かれていた名前はレッド。住所はない。消印からどこいいるのか確認しつつ、あの馬鹿ちゃんと書きやがれ、と文句を言いながらグリーンは小包を開いた。ころんと出てきたのはインスタントカメラだった。
「へぇ、今でも売ってるんだな」
デジタルカメラが出回って久しく、最新機種のポケギアでも写真が撮れるようになったこの時代に、インスタントカメラ。アナログなレッドを鑑みれば確かに彼に相応しいのだが、それを丸ごと送って来るとはどういうことだ。袋をひっくり返してみたけれども、手紙どころかメモ一枚落ちてこない。グリーンの頬が引き攣った瞬間、インスタントカメラのパッケージに何やら文字が上書きされているのに気づく。マジックで書かれたそれは、間違いなくレッドの筆跡だった。
『ポケギア壊れた。とりあえず元気。』
「だから充電しろっつーの!」
丸めた袋の残骸をゴミ箱にナイスシュートしつつ、グリーンは怒鳴る。今度帰ってきたときは手動式の充電器を持たせてやる。そんなことを決心しつつ、グリーンは溜息を吐き出して憤りを昇華し、インスタントカメラを持ってジムの自室を出た。トレーナーに声をかければ、挑戦者はいないらしく簡単に外出を了承される。そうしてグリーンはトキワシティのカメラ屋へと向かった。レッドから送られてきたインスタントカメラを現像するためだ。っつーか現像代って俺持ちなのか、ちくしょう。そんなことを考える。
初老のカメラ屋主人は、今は珍しくなりましたねぇ、と笑いながらインスタントカメラを受け取ってくれた。現像までには一時間ほどかかるらしく、じゃあ後で取りに来るよ、と言ってグリーンは店を出る。そうして三十分後、何故か店主から電話がかかってきた。曰く、お話があるので今すぐ来ていただけませんか、と。慌てている声音に、まさか現像された写真に、レッドに何かあったのかと思ったグリーンは、急いで店へと駆け込んだ。受付を息子に任せ、主人が奥からグリーンを手招きする。その手元には、すでに現像されたらしいインスタントカメラのネガと写真があった。
「つかぬ事をお伺いしますが、グリーンさん。これはレッドさんから送られてきたカメラですか・・・?」
若い世代は記録としてしか知らないが、大人はグリーンとレッドがポケモンリーグの頂点でしたバトルを直に見ている者が多い。特に二人は同じマサラタウン出身で、幼馴染だということも広く知られている。故に主人がレッドのことを知っていたとしても不思議ではなく、グリーンは隠すことなく頷いた。そうですか、と呟く主人は心なしか高揚しており、大事そうに現像された写真を抱えている。
「さすがは頂点に立つポケモントレーナーと言うべきか・・・。グリーンさん、これを現像したのが私だったから良かったものの、他の誰かに見られたら大騒ぎになっていましたよ」
「何だ? レッドに何かあったのか?」
「何かと言うか・・・。いえ、見て頂いた方が早いでしょう」
どうぞ、と差し出された写真を受け取り、グリーンは目を通す。一枚目はどこかのポケモンセンターでジョーイにでも撮ってもらったのか、ピカチュウを肩に載せ、リザードンやフシギバナなど手持ちもポケモン全員に囲まれた中で、レッドがピースしていた。相変わらずの無表情だ。めくれば、二枚目はピカチュウのアップだ。レッド自身が撮ったからなのか、少しばかりぶれている。三枚目はどうやったのか、ラプラスとカメックスに挟まれて寝ているレッドの姿が映っている。まさかカビゴンが撮ったんじゃないだろうな。そんなことを考えながらめくっていけば、たまに珍しい建物や自然の風景が写っているけれども、そのほとんどにレッドと手持ちのポケモンたちの姿があった。どれも元気そうな様子に、グリーンは思わずほっとする。しかし、十五枚目の写真を目にし、グリーンの動きは止まった。レッドの頬に擦り寄るように宙を舞っている、薄桃色の可愛らしいポケモンは。
「ミュウ・・・っ!?」
「・・・やはり、そうですよね」
グリーンの叫びに、主人がしみじみとした様子で頷く。食い入るようにグリーンが見つめる写真には、レッドがピカチュウと、ミュウと思われるポケモンに挟まれていた。薄桃色の身体に、滑らかなフォルム、長い尻尾、大きな瞳。それはギアナ高地で発見されたという、伝説のポケモンの一種だ。幻のポケモンとも言われている。すべてのポケモンのDNAを併せ持つとされ、ポケモン先祖なのではないかと仮説の立てられているミュウが、どうしてレッドと一緒に。しかも懐いているらしく、ぎゅうぎゅうとレッドに頬擦りしては尻尾でハートマークを形作っている。ピカチュウもやきもちを焼いているのか、どこか怒った表情だ。っていうか、ミュウ。ミュウ! 研究者としての顔が出て、グリーンは思わず写真を両手で握り締めてしまった。そして慌てて力を抜き、皺を必死に伸ばす。何でレッドがミュウと。そんなことを考えていると、主人が次の写真を見るように勧めてきた。
「そちらはもっと凄いですよ・・・」
恐れを多分に含んだ声に、グリーンも唾を飲みこんで写真をめくった。十六枚目。今度こそグリーンは叫ばずにはいられなかった。
「ミュウツーじゃねーか!」
そこに写っていたのは、限りなく人型に近い、二足歩行をする他とは一線を画したポケモンだった。これまた伝説であり幻だ。グリーンとて噂にしか聞いたことのなかったミュウツーが写真の中にいる。レッドと並んでいる。二人してピースをしている。だから無表情でピースすんなよ怖いんだよ。こんなときでもグリーンは無意識にツッコミを入れてしまった。遺伝子研究の結果、生み出されたという凶暴なポケモン。その面立ちはミュウとは似ても似つかず、どこか剣呑さを秘めている。しかしピース。しかしピース。一体何があったのか、グリーンはすでに考えることさえ放棄していた。
次々に写真をめくっていけば、そこには有り得ない数のポケモンに囲まれてもみくちゃにされているレッドの姿がある。どれもオリジナルとは僅かに異なっているところを見ると、これらもミュウツーと同じく遺伝子研究で生み出されたポケモンなのかもしれない。それにしたって、背後で崩れようとしている建物はなんだ。まさかポケモン城じゃないだろうな。っていうか何でおまえらそんなに楽しそうなんだ。ちくしょうずるい。俺もミュウとミュウツーと戯れたい。伝説と幻とか何だそれ。羨ましい。ずるい。でもレッドだから仕方ない。
最後の写真まで見終わると、グリーンは静かにそれらを整えて封筒へと戻した。もはや心は穏やかだ。世間一般、特に学会に発表したらとんでもない騒ぎになるだろう証拠を握り締め、代わりに財布を取り出して現像料をカウンターに載せる。
「あー・・・このことは内緒で頼む」
「分かっております。引き換えと言っては何ですが、もしも次があったら、そのときも是非ともうちへ・・・」
「頼む。こんなの人目に出せやしねぇよ」
主人も伝説のポケモンを見ることが出来て興奮しているのだろう。彼の人となり、口の堅さを知っているため、グリーンは苦笑しながら了承した。ありがとうございました、という声を背中で聞きながら店を出る。抱えている封筒がやけに何だか重い気がする。一歩、二歩、三歩、四歩、五歩、六歩、七歩、八歩、九歩、十歩。ついにグリーンは道路だというのにその場にしゃがみ込んでしまった。
「くっそー・・・! 何で俺はレッドと一緒に旅に出なかったんだ!」
今更悔やんでももう遅い。ぐぐぐ、と頭を抱えて唸りながらも、グリーンは文具店によってアルバムを購入することを決めた。タイトルにはとりあえず「レッド旅の記録vol.1」とでもつけておこう。そうして事あるごとに幼馴染の名がついたアルバムを広げて眺めるグリーンの姿が、その後のトキワジムでは目撃されたという。グリーンさん、そんなにレッドさんが恋しいんですかね。そう囁かれていることなどグリーンの耳には届かない。
しかしそれから三ヶ月後。今度はルギアとファイヤーとフリーザーとサンダーに囲まれてピースしているレッドの写真が収められたインスタントカメラが届くのだが、グリーンはまだそのことを知らないのだった。





グリーンさん、このレッドさんアルバムって何ですか?
ああああああっ! 待て、見るな、ヒビキコトネシルバー! それは俺とレッドだけの秘密だ!
・・・怪しい。

2013年9月15日(pixiv掲載2012年3月25日)