CALL





いっぱいの人で溢れている中に、あの人の姿を見つけた。
背が高いからすぐ分かる。隣の眼鏡の人と何か楽しそうに喋ってる。
たしか、親友だって言ってた。恥ずかしいから本人には言わないけどって。
そこまで考えて、三橋は「うひっ」と笑った。
他愛ない話も全部覚えている。思い出すだけで胸がぽかぽかしてくる。
だけど一人で笑ってると可笑しな人だと思われることに気づいて、慌てて顔を元に戻した。
その際に少し変な顔になってしまったことには、本人気づいてないけれど。
(・・・・・・呼びたい、な・・・)
後ろ姿に、思う。

呼びたいな。呼んだら迷惑かな。
迷惑だよね。だって今、お友達と話、してるし。
ここ、野球場だし。俺たち、学校違うし。
あぁ、でも。

この前、試合帰りのとこ見かけて、声かけなかったら怒られた。
「どうして呼んでくれねぇんだよっ」って言われた。
・・・・・・呼んで、いいのかな。
呼びたい、な。

ぎゅうっとマメだらけの手を握って、大きく息を吸って、吐いて。
「よしっ」と気合を入れて、三橋は彼を呼んだ。
マウンドから阿部のミットを目掛けて投げるみたいに、一生懸命に。



「はっ・・・・・・はるにゃさんっ!」



あなたの名前を、呼びました。





2005年2月26日