一人だけ先に着いた屋上で給水塔の位置まで登ると、良守はうんと伸びをした。高い位置からは烏森の町が一望に出来る。青い空か、それとも授業中だという不謹慎さが手伝っているのか、いつになく気持ちは清清しい。コンクリートの端に立ち、良守はすべてを見下ろす。吹きつける風がまた気持ちよくて、思わず声に出して笑った。
「・・・・・・おまえ、ちょっとは自分が女だって自覚持てよ」
呆れ気味の声に視線を下ろせば、屋上の床に閃と限が立っている。セーラー服の良守に対し学ランをまとっている二人は、限は顔を背けてどこか遠くを見ており、閃は呆れを前面に押し出してこちらを見上げている。はぁ? と良守が首を傾げると、閃がこれ見よがしに溜息を吐き出した。
「スカートの中、丸見え」
「スパッツ履いてるし別にいいだろ? それに志々尾と影宮だし」
履いていても困るから目を逸らしているのだが、最後に付け加えられた言葉に限の腕がぴくりと反応した。それだけ気を許されているのだと言えば聞こえは良いが、男として見られていないと捉えてしまうのは仕方のないことだろう。閃は「ふーん」とか何とか呟きながら、相変わらず良守を見上げたままでいる。そして彼は、呟きにしてはやけに鮮明な声で指摘した。
「ブルーに白のストライプとレース。結構可愛いの履いてんのな」
「へっ!?」
「馬鹿っ! めくるな!」
良守の間の抜けた声と、動揺しすぎている限の静止する声、そして閃が一撃を食らわされる音。素直に言っただけじゃねーか、と殴られた閃が限に食って掛かる。おまえは変態か、と珍しく限が怒鳴り返し、そして始まった殴り合いの喧嘩。攻撃に徹する限と、見事な身体捌きでそれをかわしている閃を見下ろしながら、良守はそっと自身のスカートの後ろをまくってみた。つやつやと輝く黒いスパッツが、きちんと彼女の太腿から尻の膨らみを隠している。





に油無し。






(つーか影宮、何で分かったんだよ?)



2007年8月4日(2009年5月23日再録)