追いつけない足なら、切り捨てるまで
拍手と歓声を、細波は少し離れた場所で眺めていた。正守と、切られなかった結界と、強大な妖。あれは化け物じゃないのかと、心中でひとり呟く。だが、完全変化を自分のものにしたという強さは認めてやってもいい。あれはもう、人に怯えていた獣ではない。死に近い体験を経て変わってしまった。成長したと言うべきか。
喜んでいる夜行の中から、一人の少年がそれとなく抜け出てくる。緩く巻き癖のある髪を遊ばせ、それは横を通り過ぎる際に自分を見上げた。
「細波さん。俺に教えてください。力の使い方も、人の使い方も、あなたの持っているものを全部」
猫のようだと言われる眼は、そんな小動物ではなく、肉食獣のそれだった。歓声に向ける背はぴんと伸ばされており、覚悟の程を示している。変わったのは限だけではないと、細波は唇を歪めてひとつ頷き、閃の後を追った。
面白くなりそうだと、小さく呟き、笑いながら。
これにてゲンゲンおめざ編は終了。
2007年7月29日