雨上がりの空は美しく





目覚めた限の見舞いに、多くの人が来てくれた。亜十羅や正守は言うまでもなく、他の夜行の仲間や幼い子供たちまで来てくれた。良かった生きてて、と伸ばされた手に頭をぐしゃぐしゃと撫でられて、そんなことをされるのは初めてで、固まった限を大人たちは珍しいものを見るかのように笑った。以前は「怖い」と遠巻きにされていたのに、子供たちも障子の隙間から覗いてきて、目が合えばぱたぱたと逃げていった。それを何回か繰り返してようやく、操という名の少女が「これ、貸してあげる」と人形を差し出してきた。まだ動けない限の遊び相手になればと思ったらしい。人形で遊ぶような趣味は限に無かったが、断ることも出来ずに「ありがとう」と受け取った。操と他の子供たちが嬉しそうに笑ったから、これで良かったのだと限は思った。
翡葉が部屋に現れたとき、限は信じられずに目を瞬いてしまった。そんな様子に翡葉は鼻を鳴らして笑い、「手間かけさせるんじゃねぇよ」と告げた。烏森で意識を失った己を連れ帰ってきてくれたのが目の前の相手だと聞いていたので、限は深く頭を下げて礼を言った。「ありがとうございました」と述べた限に、翡葉は「これは貸しだからな」と心底愉快そうに笑った。
同年代の仲間も見舞いに来てくれた。以前は滅多に話をしなかったが、言葉を交わしてみれば、自分も相手もそう大差ないことを限は知った。相手もそう感じたのだろう。しばらくして秀は、「限君は口下手なんだね」と朗らかに笑った。また来るね、と言葉にはせず手を振って大が出て行った。
すべてが優しい時間だった。まるで生まれ変わったようだと、限は感じた。世界が新たなもののように思える。
ただ、閃と会っていないことだけが、いささかの澱であり不安だった。

良守が夜行の本拠地を訪れたのは、限が目覚めてから半月後のことだった。





次回、よっしー登場。
2007年7月22日