後日談.セプター4は伏見さんを心から必要としています。





こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、と前置きしてから、秋山は控えめに笑った。
「伏見さんが俺たちを・・・セプター4を選んでくれて、本当に嬉しいです」
暗に吠舞羅に戻ると思っていたと言われ、伏見はこれでもかというほど不愉快に顔を歪めた。それに気づいてか気づかずか、俺も嬉しいです、と日高が諸手を挙げて賛成する。
「伏見さんが吠舞羅に戻らなくて本当に良かったっす!」
「てめぇらがそんなこと言うのは、あの報告書の山が理由だろ」
「あ、いや、そんなことは・・・」
「だって伏見さんがいないとうちの事務関係の五割は滞るでしょうし。ちゃんと帰ってきてくれて本当に良かったっすよ!」
「ちっ! そんなこと言ってる暇があるならさっさと仕事しろ。下手な報告書作ってこれ以上俺に手間をかけさせんじゃねぇぞ」
吐き捨てれば秋山は申し訳なさそうに苦笑し、日高は笑って仕事に戻っていく。セプター4は戦闘だけでなく、事務関係もそれなりにこなせるオールマイティな人間が揃っている。全体的にレベルが高いと言えばいいのか。だからこそ少数精鋭で回すことの出来る部署であり、各個人の負担が大きいのが現状だった。大勢と関わらないで済むのは楽だが、今のような仕事に追われているときは恨めしくなる。自身の書類が山のように積まれている机に嫌々ながらにつこうとしたとき、伏見は向けられている視線に気が付いた。近くまで歩み寄ってきていたのは、副長である淡島だった。
「ごめんなさいね」
「・・・何がですか」
突然の謝罪に訝しく思って問い返せば、淡島は微かに眦を下げて伏見の肩を叩いた。
「あなたは与えられた仕事を放棄するような人間じゃない。疑って悪かったわ」
「・・・別に。裏切りは十八番なんで、何とでも言ってください」
「お茶でも入れるわ」
あんこは勘弁してくださいよ。そう言いたかったけれども、伏見は黙って淡島の背を見送り、自身の椅子を引いて座った。パソコン画面さえ埋め尽くされそうなほどの書類にうんざりして、舌打ちをひとつしてから一番上のものに手を伸ばす。文字に目を走らせる。王がひとり失われても変わらない。日々はこうして流されていく。





誰が死んでも世界はちっとも変わらない。
2012年12月31日(pixiv掲載2012年12月30日)