65くらい.伏見猿比古の恐怖





「万が一、美咲が本当に俺に惚れてたとして」
睥睨ではない、揶揄でもない、感情を一切消した無表情で、伏見は八田と相対していた。突き付けられているサーベルの分だけ、二人の距離は開いている。
「俺は絶対に、おまえのものにはならない」
「っんでだよ・・・!」
「恋なんていつかは終わる。そうなったらおまえはまた俺のことなんて見向きもしなくなるんだろ? だったら俺は一生このままでいい」
ふわりと、伏見が笑った。それは八田の初めて見る表情で、儚く、消えてしまいそうなものだった。
「おまえに捨てられるくらいなら、俺は一生『裏切り者の伏見猿比古』のままでいい。・・・このままが、いい」
泣きそうな、声だった。





あんな思い、もうしたくない。
2012年12月24日(pixiv掲載2012年12月23日)