3.伏見猿比古の苛立ち





戦闘と事務と。どちらが得意かと問われれば、伏見は事務を選ぶだろう。もちろん戦うことは大好きだし、サーベルを振るうときの高揚感は何物にも代えがたい。けれど、それはあくまで限られた相手のときのみだ。常の伏見は情報処理などの能力を買われて、執務室でパソコンを叩いていることが多い。後は探索とか、追跡とか。とにかくそういった小手先の仕事が得意だった。もちろん戦闘における実力も評価されてのナンバー3ではあったが、怠惰な性格が災いして自ら先陣を切ることはない。
「大丈夫ですか? 見回りくらい、自分たちが行きますから休んでいてください」
「動いてる方が楽なんだよ。無駄口叩くんじゃねぇ」
ただ、そんなデスクワークが得意な伏見も、やはり見回りの巡回には行かされる。セプター4では何人かずつのチームを組んで、一日に数回の見回りを行っている。それは主に繁華街が多かったが、能力者の悪い噂を聞けばそこを重点的に監視する。朝からずっと顔色が悪いままの伏見は、部下の心配を蹴り飛ばして執務室を出た。目的地までは車移動だ。免許を持っていない伏見は、いつも運転席の後ろに座らされる。上座だ。車の微かな振動にまた、下腹部の痛みが盛り返してきた。ち、と今日だけで何度舌打ちしたか分からない。
眉間に皺を刻んで、目を瞑る。同乗者の部下三人は気遣っているのか、話をせずに沈黙している。喋れよ、と思うけれどもそれすら面倒くさくて更に眉間に力を込めた。ぐらぐらと思考が車体に合わせてシャッフルされる。また、血の流れる感覚に背中が震える。気持ち悪い。まだ十代だからか、それとも好き嫌いが多いからか、不規則な生活をしているからか、それは周期的な間隔ではやってこない。数ヶ月に一度のこともあるし、半年に一度のこともある。だからその分、来たときの痛みと不快感は半端なかった。本来ならば家に閉じ籠り、何もせずにベッドで丸くなっていたいくらいに、それは伏見を苦しめる。女になんて、誰もなりたいなんて願ってないのに。
車を降りる。見上げる街並みは高層ビルばかりで、行き交う人の賑わいに舌打ちする。部下を先に行かせ、伏見はその後をだらだらとした足取りで着いていった。いつもは単独行動をとるけれども、今日ばかりはそんな気になれない。歩く度に零れ出る血に、ああ、辟易する。





きもちわるい・・・。
2012年12月24日(pixiv掲載2012年12月23日)