23.一月
「及川さん・・・っ!」
街中で偶然出会った憎き後輩に、影山に、及川はふっと笑った。才能ならば比べるべくもないほどに及川の上を行っているのに、いつまで経っても影山はそれを上手く使いこなせない。日向との変人速攻は確かに凄いけれども、それだけじゃ駄目なのだ。ひとりのスパイカーに拘るセッターなんて話にならない。コートに立つ全員を限界まで活かしてこそのセッターだ。及川にとって確かに岩泉は特別だけれど、彼だけに拘れば間違いなく殴られる。他でもない岩泉によって。そんな幼馴染兼選手と出逢えたことが、及川の幸運でもある。
「悪いけど勝ち逃げするよ。勝負はまたいつか、機会があったらね」
馬鹿なおまえが大学に入れたらだけど、と軽やかにからかって、及川は背を向けた。いつか負ける日が来るかもしれない。けれどその日まで及川が選手としてプレーし続けているかは分からない。悪いね、飛雄。思ってもいない謝罪を口にして、及川は鼻歌を奏でながらその場を離れた。
人生において、及川は影山の二年先を行っている。その差が埋まることは終ぞないのだ。
俺はずるいから勝ち逃げするよ。遅れてきたおまえが悪い。
2014年1月5日(pixiv掲載2014年1月3日)