19.十一月
岩泉がいなければ、今の自分はない。及川はそれを知っている。名セッターとしての看板は元より、バレーボール選手としても存在してはいなかっただろう。中学三年のとき、影山を嫉妬と焦燥のままに殴り飛ばし、そうして無様にレギュラーを追われ、バレーボール自体を辞めていたに違いない。いくらバレーボールが好きでも、それとこれとは別問題だ。負けてもいいから、レギュラーになれなくてもいいからと心の在り処を定めるには、及川は実力があり、プライドが高すぎた。本当に、どうしようもなかった。
腐り、選手ですらいられなくなりかけた及川の存在を確たるものにしてくれたのが、岩泉だった。いくら感謝をしても足りない。どうすればこの想いが伝わるのかを、及川は常に考えている。どれだけのトスを捧げても、勝利を共にしても足りやしない。及川のバレーは常に岩泉と共に在った。肉体的にも、精神的にも。それが変わることは生涯ないのだろうと確信している。
岩泉一という存在を、敬愛している。だからこそ可能な限り隣にいたいと、いつかバレーボールという競技から離れる日が来たとしても、隣にいたいと、及川はそう思っている。
冗談のように口にする超絶信頼関係は、及川の何よりの自慢であり、誇りだ。
俺には勿体ないくらいの存在だよ、君は。
2014年1月5日(pixiv掲載2014年1月3日)