14.十月下旬





決勝の相手は因縁の白鳥沢だった。ネットを挟んだ場所に牛島がいる。願ったり叶ったりの光景に、及川の背が武者震いに慄いた。唇の端が無意識に上がる。好戦的な自分が嫌というほどに顔を出す。予選に出たすべての学校の部員たちが客席にいる。がんがんと鳴らされている応援のグッズ。最後だとばかりに絞り出される声援。天井から降る照明の明かり。穢れない純白に爽やかなスカイブルー。青葉城西の名がコールされる。これが最後ではない。全国でまた、同じことをする。だからいつもと変わらずに、及川はチームメイトに笑いかけた。
「信じてるよ、おまえら」
呪文であり脅迫であり懇願でもあるそれに、初めて応えが返された。
「俺らもおまえのこと信じてるっつーの」
岩泉の言葉に、きょとんと及川が目を瞬く。その両肩が左右から叩かれ、慌てて見やれば花巻と松川が隣でにやにやと笑みを浮かべている。
「頼むよ、部長様」
「期待してる、セッター様」
渡が何度も首を縦に振る横で、金田一は拳を握り、国見もやる気なしを装う影で高潮が見え隠れしている。
「頑張りましょう、及川さん!」
「俺らみんなで勝ちましょう!」
「確かにいい加減に勝ってもいい頃だと思うんで」
ぽかんと口を開く及川の前で、他の部員たちも監督の入畑もコーチの溝口も、皆が笑っている。その瞳に浮かぶ輝きは明らかで、きっと言葉にするのなら信頼と呼ぶのだろう。ぐ、と及川は唇を噛み締めた。柄にもなく試合前から泣きそうになった。息を吐き出し、吸い込み、吐き出し、顔を上げる。岩泉と目が合って、テンションは最高の状態に落ち着いた。
「――行こう」
「おおっ!」
中高合わせて六年間、挑戦の集大成が今、幕を開ける。





行こう、俺の仲間たち。
2014年1月5日(pixiv掲載2014年1月3日)