『末端から滲む5題 』と同設定のため、アレルヤが女の子です。そしてアレルヤ→刹那←ネーナで、割と下世話です。





最近越してきたお隣さんは、よく分からない。沙慈・クロスロードは常々そう思っていた。年齢は沙慈と大して変わらないはずなのだが、それにしては学校に通っている様子もないし、定職についている感じでもない。一度「何をしているんですか?」と聞いた際には、「システムエンジニアだ」との答えを返された。出来高制らしく、短期で集中的に仕事を片付ければ、後は比較的自由らしい。だから出かけているらしいときは長期不在なのかと沙慈は納得していた。お隣の刹那・F・セイエイさんは、システムエンジニア。沙慈のご近所メモにそんな内容が書き入れられる。
そんなお隣さんには、どうやら恋人がいるらしい。しかも年上の、かなりの美人だ。先日、偶然スーパーで一緒になって帰ってきたところ、お隣さんの家の前にその女性が立っていたのだ。白いシンプルなコートを身に纏っていて、身長は女性にしてはかなり大きな方だろう。けれど厳ついというよりもモデルのような印象が勝って、下世話だけれども、そのスタイルの良さは、特に胸の大きさは明らかに人目を引くものだった。寄りかかっていたドアから背を離し、「刹那」とお隣さんの名前を呼んだ顔には安堵の色よりも「会えて嬉しい」といった感じの感情が広がっていて、初対面の沙慈にも一瞬で分かってしまったのである。この人はお隣さんに恋をしているのだ、と。うわぁセイエイさん、凄いなぁ。そう思ってしまった次の瞬間に、沙慈はルイスに殴られる自分を想像してしまったけれども、これでも一応は健全な青少年なのだから許して欲しい。しかし後日、興味本位八割で「この前の人は誰ですか?」と尋ねてみたところ、お隣さんは常と変わらない冷静さで答えてくださった。曰く「同僚だ」と。それだけですか、と思わず問い重ねてしまった沙慈を誰が責められよう。
そしてお隣さんには、どうやら愛人もいるらしい。しかも今度は性格の明るそうな、テンションの高い可愛らしい少女だ。先日、ルイスとの待ち合わせに家を出たところで言い合っている姿が目に飛び込んできたのだ。お隣さんは相変わらず無愛想だったけれども、よくよく注意してみれば眉間に一本皺を刻んでいて、それを向けられている相手は赤い髪が鮮やかな沙慈と同年代の女の子だった。短いスカートから伸びている足が健康的で、お隣さんに腕を絡めるようにして胸を押し付けているオフェンシブさは、この前の「同僚さん」には見られない個性だ。うわぁセイエイさん、凄いなぁ。そう思ってしまった次の瞬間、二股という言葉が浮かんでしまって沙慈は少しお隣さんの良識を危ぶんだけれども、一方的な好意という可能性もある。ここは見て見ぬ振りをするのがご近所付き合いのためだろうと考え、ルイスに怒られないためにも少し早足でホールへと向かう。来たエレベーターに乗ってボタンを押すために振り向いた沙慈は、少女に唇を奪われているお隣さんを目撃してしまった。堪えられなくなって後日、興味本位九割で「この前の人は誰ですか?」と尋ねてみたところ、お隣さんはやはり眉間に皺を一本刻んで答えてくださった。曰く「ライバル社のシステムエンジニアだ」と。それだけですか、と思わず問いを重ねてしまった沙慈を誰が責められよう。
そして今、目の前で「同僚さん」と「ライバル社さん」が言い争いを繰り広げている。二人の平均よりも間違いなく大きな胸に挟まれているのは、やはり沙慈のお隣さんだ。
「だからっ! 何で君が刹那のところに押しかけてくるの!? 僕たちの仲間でもない君がどうして!」
「だってあたし、刹那のこと大好きだもん! ねぇ刹那、刹那はあたしのこと嫌い? 好きだよね? 大好きだよね!」
「大好き・・・っ!? ぼ、僕だってそんなこと言ってもらったことないのに!」
「へぇ、あなたって刹那に好かれてないんだ? そりゃそうよね、だってオバサンだもの。刹那はやっぱり若い方がいいもんね?」
「オバサンじゃないよっ! ・・・・・・それを言うなら、刹那は男だもの。やっぱり胸の大きな方がいいよね!? だから僕の方が大好きだよね!?」
「む、胸なんか垂れてくだけじゃん! あたしなんか刹那とチューしたもん! だから刹那はあたしの彼氏なの!」
「僕は刹那とセックスしたよ! そ、そりゃあ僕が押し倒したんだけど、でもしたのは確かだよっ!」
「うっそ! やだやだやだ、刹那それ本当!? やぁん、刹那の童貞はあたしが貰うって決めてたのにーっ!」
「だから諦めて帰ってよ! 刹那は僕の、か、か、かかかかかか、かれ、彼氏、なんだから!」
「えーでも同じ相手とばっかりやってても面白くないでしょ? ねぇ刹那、今からあたしとセックスしよ? あたし、すっごく上手いよ? ご奉仕してあげる」
「やめてよっ! 刹那に余計なこと吹き込まないで!」
「うっさいわよ、アレルヤオバサン!」
「君こそ引いてよ、ネーナ・トリニティ!」
喧々囂々わあわあぎゃあぎゃあ。古来より女は三人寄れば姦しいとも言うけれど、二人でも随分な騒々しさだ。どうやらアレルヤというらしい同僚さんは顔を蒼白にさせたり真っ赤にさせたりしながら肉体関係を主張しているし、ネーナというらしいライバル社さんは瞳を輝かせたり舌なめずりさせながら肉体関係を所望している。うわぁセイエイさん、凄いなぁ。未だルイスとそういう関係には到っていない沙慈は、ちょっとばかり羨みを感じながらもお隣さんに眼差しを向ける。しかし気の毒だなぁ、とも思ってしまった。女性二人の言い争いは未だ止まない。
巨乳に挟まれて迷惑そうな顔のまま窒息死しそうなお隣さんは、やはり沙慈にとって知れば知るほどよく分からない存在なのだった。





だー!





(そして結局美形さんが二人ずつ、同僚さんとライバル社さんをそれぞれ迎えに来ていた。)
2008年8月13日