【「末端から滲む5題」を読むにあたって】

この話では、アレルヤが女の子です。ついでのようにティエリアも女の子です。
カップリングはアレルヤ→刹那で、テェリアはアレルヤの相談相手、ロックオンは刹那の兄貴分です。
微妙に性的描写がありますので、そういったものが苦手な方はご覧にならないで下さい。何でも大丈夫という方のみどうぞ。
閲覧後の苦情は申し訳ありませんがお受け出来ません。少しでもやばいと思われた方は今すぐお戻り下さいませ。むしろレッツリターン!



▼ 大丈夫です、読みます ▼












































1.恥らう指先



アレルヤが己の恋心に気づいたのは、もう一年近く前の話だ。自分の心臓が、ある特定の人物の傍にいると、常より早く鼓動を刻む。最初は身体に異常があるのかと危ぶんでしまったけれども、それがしばらく続き、視線がいつの間にかその人物を追っているのに気づいて、まさかと思った。まさか自分が、そういった意味合いの感情を抱くだなんて。疑いだろうと思いついてしまえば以降は急転直下だ。彼のことを考えるだけで風邪を引いたかのように頬が熱くなってくるし、音に出さず名前を綴ってみれば慌てて唇を押さえて周囲を見回してしまう。暇さえあれば姿が頭に浮かんでくるばかりで、ここまで来れば鈍いことを自覚しているアレルヤでも理解することが出来た。この鼓動は不整脈が原因じゃない。心筋梗塞の心配も無い。自分は恋をしているのだ。彼に―――刹那・F・セイエイに。
自分よりも小さな身体。中東を思わせるエキゾティックな肌色に、血と朝焼けを混ぜ合わせたかのような瞳。くせの強い黒髪は彼が動くのと同じように宙を舞い、細くばねのある手足は軽やかに先へと駆けていく。無表情で、言葉数も多くない。けれど戦場に立たせれば強く立ち回り、接近戦では自分よりも彼の方が上位だ。己の機体であるガンダムエクシアを見上げる横顔を、アレルヤは何度もキュリオスのコクピットから見つめた。最初は弟のようだと思っていた。どこか不安定で目が離せなくて、守ってあげなくてはと思っていた。けれどもう、彼に恋をしてしまった。
いつものように、刹那がエクシアを見上げる。アレルヤはキュリオス内から、彼を見つめる。操縦桿を握り締めていた指先が、気づけば己の頬に伸びていた。パイロットスーツを通して、濡れた感触が伝わる。あらわになっている左目を閉じると、更に指先が濡れた。刹那。呟きは音にならない。
・・・・・・死なないで。願うこの気持ちは、紛れもない恋だった。

(どうか、生きて幸せに。)





2.踝の誘惑



ミッションもなく機体の調整も終わり、本を片手に身体を休めていたティエリアを妨害したのは、けたたましく部屋に駆け込んできた同僚のマイスター、アレルヤだった。
「どどどどうしようっ、ティエリア!」
「うるさい。黙れ。去れ。そして消えろ」
「刹那が! 刹那が・・・・・・っ!」
これまた同僚の、ティエリアは認めていないけれども最年少マイスターの名を繰り返して、騒動の主であるアレルヤはぺたんと床に座り込んでしまう。うっうっと嘆き始める様に、ティエリアは隠すことなくあからさまに舌打ちをしてみせたが、アレルヤは到底聞いていない。ガンダムマイスターは総勢四人いるが、男が刹那とロックオン、女がアレルヤと自分であるため、何かあるとアレルヤはすぐに自分の元にやってくる。いい加減ティエリアは相手をするのも面倒くさく思い始めていた。
「今度は何だ、アレルヤ・ハプティズム」
「・・・・・・ティエリア・・・」
左目を拭うアレルヤは、確か今年で19歳になったはずだ。女にしては背も高く、スタイル抜群でありながらも控え目な性格をしている彼女が、三歳年下の刹那に片思いをしていることをティエリアは知っている。趣味が悪いと常々思っていたし、言葉にもしていた。何だってあんな子供を。
「さっき食堂から部屋に戻る途中、デッキで刹那を見かけたんだ・・・・・・」
「マイスターは待機命令が下されているから、プトレマイオス内にいるのは当然だろう」
「ロックオンとか、リヒテンダールとか、ラッセとか、みんなで雑誌を囲んでいて」
「それくらい、おまえもクリスティナやフェルトとしているだろう」
「刹那は少し眠そうだったみたいでソファーにもたれていたんだけど、リヒテンダールが『刹那はこの子とこの子、どっちがいい?』って肩を組んで聞いて」
「・・・・・・先が見えたな」
「刹那が興味無さそうに『どれでもいい』って答えたら、ラッセが『そう答えると思った』って言って、ロックオンが『おまえももう16なんだから興味くらい持てよ』って言って、でもって『じゃあおまえが女を見るとき一番最初にチェックすんのはどこなんだ?』って聞いて」
「下種が」
「そうしたら、刹那が少し考えてから答えたんだ・・・・・・『踝』って」
「・・・・・・あれは存外マニアックな趣味をしているのか」
無愛想で生意気なかの子供を思い出し、ティエリアは僅かに感心する。しかしアレルヤはわぁっと泣き出した。
「どうしようティエリア! 刹那、踝って、踝って! どうしよう! 僕、踝になんか自信ないよ!」
「安心しろ。大抵の人間はそんなところに自信を持たない」
「僕いつもブーツを履いてるし、刹那に踝を見せたことなんてないよ! もしかして女だって思われてないのかもしれない・・・! ねぇ、明日からパンプスを履くべきなのかな!? それともミュール!? どう思う、ティエリア!」
「俺から貴様に言えることはただひとつだ。さっさとこの部屋から出て行け。去れ。そして消えろ」
「酷いよ、自分は美脚だからって! お願いだよティエリア、その脚を僕にちょうだい!」
「スメラギ・李・ノリエガに勝るとも劣らない胸を持っている貴様に言われたくないわ! 貴様こそその胸を俺に寄越せ! 半分でもいいから寄越せ!」
ベッドに載せていた足首をがしっと掴まれて引きずられ、ティエリアは反撃として持っていた文庫本を忌々しい脂肪の塊に向かって投げつける。しかし「ぼよん」とこれまたむかつく音を立て、本は弾力を受けて床へと落ちた。まったく何度見てもむかつく胸だ。ぴったりとしたタートルネックを着ているからこそ如実に大きさが分かってしまう。ブラジャーは特注しないと無くて困る、とスメラギと話していたことを思い出す。ああ忌々しい、忌々しい! 自分はカーディガンを羽織って貧乳度合いを隠さなくてはいけないというのに!
「ティエリアー! 踝! 踝ちょうだいー!」
「放せっ、アレルヤ・ハプティズム!」
「踝ー! 刹那ー!」
縋るように足首を掴んでくるアレルヤの脳天に、ティエリアは力の限りチョップを叩き込んで叫んだ。こいつといい刹那といい他のクルーといい、まったくまったくまったくもう!
「どうしてこんなに馬鹿ばっかりなんだ!」

(アレルヤは巨乳のボン・キュ・ボン。ティエリアはAAカップのスレンダー。)





3.冷えた両腕



今回のミッション中、仮宿となっているマンションに帰ってきた刹那は、部屋の前に誰かが立っているのに気がついた。一瞬眉を顰め、しばし考えてから理解する。気づいて顔を上げ、にこっと笑ったのは同じマイスターであるアレルヤだった。今回のミッションに彼女の参加は無かったはずだが、と刹那はプランを思い返す。
「おかえり、刹那」
「・・・・・・何か変更があったのか?」
「え? ああ、違うよ。ミッションは予定通り進行だって」
「それなら何だ」
問えば、アレルヤは手にしていた紙袋を少しだけ掲げてみせる。
「最新の情報端末が支給されたんだ。ちょうどこっちに来る予定があったから預かってきたよ」
はい、と渡された紙袋の中には、確かに情報端末らしきものが入っている。データの移行が面倒だと刹那は僅かに思ったが、これも任務のうちなので仕方がない。溜息を押し殺していると、引っ込められていくアレルヤの指先が目に入る。三歳の年齢差があれど、その手は自分とほとんど変わらない大きさで、刹那はそれが少しばかり悔しかった。アレルヤは女だけれども、身長も力も敵わないのはマイスターとして、それ以前に男として不愉快さを覚える。
だが今は、そのアレルヤの指先の白さがやけに目に付いた。通常なら桜色をしているはずの爪が今は青味を帯びているからだと気づき、遅れて今日の寒さを思う。吐く息が白い。見上げれば、アレルヤの鼻の頭が赤く染まっている。控え目に笑う彼女は、どれだけここで自分の帰りを待っていたのだろう。
「じゃあ僕、帰るね。一人だからってジャンクフードばっかり食べてちゃ駄目だよ? それと大丈夫だとは思うけど、十分に気をつけて。トレミーで待ってるから。えっと・・・・・・み、みんな、で」
最後に付け加えて何故か自分でへこんだようだが、刹那に理由は分からない。じゃあね、と力なく微笑んで擦れ違うアレルヤの腕を掴めば、その冷たさと存外の細さに驚いた。マイスターとして筋肉をつけているのは知っていたが、それにしては柔らかい。握りなおせば、アレルヤの腕が震えた。
「せ、刹那・・・・・・?」
「・・・・・・帰るなら、温まってから帰れ。おまえが風邪を引けば、次のミッションに支障が出る」
「え」
「コーヒーくらいならある」
たぶん、と付け足せば、アレルヤの真っ白だった頬が徐々に赤らんでいく。見上げる首の角度は相変わらず不愉快だったが、そこで刹那はようやく、どうして自分が一目でアレルヤだと分からなかったのか気がついた。今日の彼女は、まるで女性が着るような華奢なデザインのコートを着ているのだ。だから分からなかったのだと理解し、刹那は満足した。ありがとう、と礼を述べるアレルヤの声は少し掠れていた。今日のアレルヤは女みたいだな、と思いながら、刹那はマンションのドアを開いた。

(あれりゃーはお洒落してきたんだよ、せっちゃん・・・!)





4.爪先のリズム



恋をして約一年。アレルヤは出来る限り刹那のことを見つめてきた。気配に敏い彼のことだから、すぐに気づかれてしまうのがほとんどだったけれども、振り向かれて笑顔を返すことにも慣れて久しい。刹那が何も言ってこないのを良いことに、アレルヤはずっと見つめ続けた。少しずつ少しずつ、粉雪が降り積もるように恋心が募ってく。
小さな癖を、幾つか知れた。銃を構える前に必ず銃口をなぞること。食事の際に挨拶だけは決してしないこと。好き嫌いは無く、出されたものはすべて食べること。駆け出すときは右足で踏み切って、着地するときは左から。殺すときは必ず相手の目を見て。意外と本を読む。だけど小説ではなく政治や軍事についてのものばかりで、テレビは見てもニュースだけ。自ら話しかけるのは用事のあるときのみ。話しかけられて答えるのは必要なことのみ。そのそっけなさはティエリアに通じるものがあり、密やかに二人は似ていると思って、そのことにすら嫉妬を覚えた自分に唇を噛んだ。この一年、アレルヤはずっと刹那を見てきた。だからこそ気づいてしまったこともある。
刹那の見ているものが何か、抱いているものが何なのか、アレルヤには分からない。それはきっと知ることは出来ても、共有することは出来ない類のものなのだろう。アレルヤに超人機関という過去があり、ハレルヤという半身がいるように。己でなければ乗り越えられないものは確かにある。乗り越えなくてはならないものは、確かに。それは深く根強く、刹那の中に息づいている。
きっと恋は、彼の中に存在しないだろう。何かを大切だと思うことすら、刹那にはないのかもしれない。ただ意義のために生きているのだろうと、エクシアを見上げる彼の姿を見る度にそう思う。
この恋は実らない。彼が自分を見てくれることは無い。ならば同じガンダムマイスターとして、彼の同僚として価値を認めてもらえればそれでいい。その幸福に酔わなくてはならない。そう分かっていても抑えられない己に、アレルヤは苦笑した。身体の奥底から声がする。ハレルヤではない。これは欲望だ。己の「女」が顔を出す。
望みが無いのなら奪ってしまえ。欲望のままに身を賭して、一度でいいからと請えばいい。この恋情のままに燃えて、忘れられない幸福と絶頂を。押さえつけて、手に入れろ。
あの、揺れる爪先に口付ける夜を。

(次は微量の性的描写を含みます。)





5.掌の温もり



―――その夜は異常だったとしか言えない。
知識だけなら刹那にもあった。十代に差し掛かる頃を戦場で過ごしたが、刹那はリーダーだった男に気に入られていたこともあり様々な知識を教えられていた。その中に、男女の関係についてもあった。だがさしたる興味は抱けず、男は「お子様にはまだ早いか」と言って笑っていた。ソレスタルビーイングに所属してからは、ロックオンに巻き込まれるような形でそういった会話を交わすこともあったし、付き合いでアダルトビデオを見たこともある。ただ、やはり興味は無かった。女の柔らかな肌など知らなくとも、戦場で引くトリガーの感覚さえ鮮明なら生きていける。自分はそれでいいのだと、刹那は思っていた。
だからこそ今のこの状況は、想定範囲外の何物でもなかった。身を起こそうとするが、適確に急所を押さえられているためそれも出来ない。接近戦なら負けはしないけれども、純粋に力だけを比べたなら刹那の方が劣っている。そして腹の上に乗られては反撃の手数も激減してしまう。照明のついていない部屋の中、アレルヤの瞳だけが輝いていた。
「・・・・・・何のつもりだ」
低く問い詰めれば、彼女の目が細められた。ようやく暗闇に目が慣れ始め、思考も眠りの淵から戻ってくる。寝込みを襲われただなんて、例え相手が同僚だとしても、ティエリアに嫌味を言われそうだと刹那は思った。
「ごめんね」
「謝るくらいならさっさと放せ」
「ごめんね。それは出来ない」
やんわりとした声で明確に拒絶する。常の穏やかなアレルヤらしくなく、刹那は眉を顰めた。ちょうど腰の辺りにアレルヤの体重を感じる。暗さで視界が不鮮明な分、触れる肉の感触だけがリアルだ。
「ごめんね、刹那。ごめんね、ごめんね、ごめんね。僕なんかに触られるの嫌だよね。でも、ごめん。今だけだから」
右手首が手錠でベッドサイドへと繋がれている。このすべての周到さと気づかなかった自分自身を鑑みて、薬を盛られた可能性に刹那は思い当たった。同じマイスターだからといって気を許し過ぎた。
「終わったら、僕を殺してくれていい。だから今だけは許して」
「・・・・・・何をする気だ」
問いかけに答えはなかった。アレルヤは柔らかく微笑み、指先を刹那の夜着代わりのTシャツの下へと偲ばせる。触れてくる指の冷たさにぎょっとしていると、それは骨をなぞるようにして徐々に服をたくし上げていった。空気に晒された肌が震える。アレルヤがゆっくりと上半身を倒し、落ちた前髪が刹那の胸をくすぐった。暗闇の中でも分かる赤い舌が、鎖骨の形を捉えるかのように辿る。
「・・・っ・・・」
生温かい感触が不快で、離れると来るひやりとした寒さに息が漏れる。アレルヤの舌はゆっくりと移動し、刹那の胸に蹂躙する。右の乳首をくるりと嘗め回し、唇で吸い上げられて、ちゅ、と行為にそぐわない可愛らしい音が刹那の耳に届いた。左は爪で弾かれるように弄られる。体験する初めての感覚に、意識が持っていかれそうになる。
「アレルヤっ・・・! やめろ、アレルヤ!」
このままでは拙いと感じて叫べば、アレルヤの愛撫が、そう、それこそ愛撫と呼ぶべきだろう行為が止まる。自分の息が乱れつつあるのを刹那は自覚していた。知識はあったが、経験は無かった。それでも分かる。アレルヤが自分に施しているのは、紛れもない愛撫だ。その行為の行き着く先は、きっと想像と違いない。
「何故・・・・・・?」
信じられず呟けば、自分の胸の上で少しだけ顔を上げたアレルヤが唇を綻ばせる。そのまま身を起こし、彼女は自身の着ているタートルネックのカットソーに手をかけた。止める間もなくそれは腕と首を通り抜け、そのままベッドの下に落とされる。現れた豊満な胸を包む下着のレースが鮮やかで、刹那は反射的に顔を逸らした。それでも、目に焼きついた肌の白さは拭いきれない。ふ、とアレルヤが笑ったようだった。衣擦れの音がして、また何かが床に落とされる。
「刹那は何もしなくていいんだよ。僕がひとりで、全部やるから」
アレルヤがゆっくりと、座っていた位置を下へとずらす。股間を太腿で掠められて息を呑むと、ひゅっと引きつるような音が部屋に響いた。伸びてきた両手に頬を包まれ、否応なしに顔を戻すと、やはりアレルヤの何もまとっていない上半身が目に飛び込んでくる。胸の先端が腹を掠め、それだけで反応しそうになる自分に嫌悪する。きつく睨みつければ、瞳を合わせたまま唇が重ねられた。舌は入れず挟む込むようにして啄ばみ、離れていく。
「・・・・・・好きだよ、刹那」
そのときのアレルヤは、まるで泣きそうな顔をしていた。
「だから、抱かれて」
アレルヤの左手が刹那のハーフパンツへと伸びる。右手は指一本ずつを絡ませるように、刹那の左手と重ねられていた。その繋がった箇所だけが、やけに熱かったのを覚えている。
そこから先は、快楽の海だった。

(この夜を、この恋を決して忘れない。)





末端から滲む5題 / title by age
2008年2月5日