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正直な話、勝者がどちらであろうと切嗣は構わなかった。臓硯には今まで執行者から隠してもらった恩があるけれども、それも彼を若い肉体に転生させ、老いず、滅多なことでは死にもしない死徒化させたことで報いたと考えている。これ以上間桐家に縛られるのは、切嗣としてもごめんだった。雁夜は友人だから魔術の関係のないところで関わる分には良いけれど、これ以上「魔術師の衛宮切嗣」を拘束されるわけにはいかない。臓硯という検体ですでに十分な結果は得られている。だからもう死徒化に関して、切嗣が改良を施すことはないだろう。
バーサーカーとアーチャーの争いとは反対の方向から、切嗣は事の成り行きを見守っていた。そうしてついに激しい音を最後に静寂が訪れる。使い魔から送られる映像を、切嗣は瞼を閉じて見つめていた。時臣の死体を足元に、臓硯が小聖杯を頂く。アーチャーの魂が聖杯へと飲み込まれていった。そうして令呪を用い、臓硯がバーサーカーに自害を命じる。七つの英霊の魂で器が満たされた。どろり、零れた泥のようなあれは何だろうか。あれが万物の願望機だろうか。とはいえ臓硯の目的はすでにそこを通り越している。彼が望むのはその先、孔から繋がる外の世界、根源への到達だ。
暗い孔が広がっていくのを、瞼の裏で、肌で、感じる。
「・・・父さん」
亡き父を、切嗣は呼んだ。見えていればいいと、心から思う。





父さん、これがあなたの求めた到達点です。
2014年2月28日(pixiv掲載2014年2月24日)