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義務教育を終えたばかりの子供が生きていくには、世の中は些か不親切だった。けれども、そういった子供がいないわけではない。伝手のない雁夜は職業安定所などをいくつも回って、十五歳でも就ける仕事を探した。最初は賃金も安く、数人と相部屋しなくてはいけない寮だったりして、間桐家の贅沢に慣れた身としては辛かったけれども、反骨精神がすべてを凌駕した。いくつもの仕事をこなして、ただ生きるために必死だった。幼馴染の葵にだけは、時折連絡を入れた。馬鹿みたいな未練だった。彼女が時臣と結婚すると聞いて足元が崩壊するような気分だったけれども、唇は「おめでとう」と言葉を絞り出していた。いつか彼女を迎えに行けたら、と思わなかったわけじゃない。けれども間桐家を飛び出した自分より、魔術師なんて気に入らないけれども、遠坂家の当主である時臣の方が何不自由なく葵を幸せにしてくれるだろう。そう信じて、雁夜は幼馴染を祝福した。結婚式には呼ばれたけれども行けるわけがなかった。
十九で出版社に出入りし始め、二十一で初めて記事を任された。若く一人身なことも手伝って、海外へ派遣されることも多かった。それは危険な情勢のときもあったけれども、雁夜はカメラを片手に飛び込んでいった。自らの言葉を世界に向けて発信する。それが己の使命のように感じていた。そうして土産を、葵の娘である凛と桜に買って帰る。ありがとう、雁夜おじさん。そう言ってくれる少女たちが雁夜の喜びでもあった。
そうして気が付けば十一年の月日が流れ、雁夜は二十六歳になっていた。
背を向けた。多くの物に見ない振りをして。
2014年2月28日(pixiv掲載2014年2月24日)