地獄で雪玉





雪が降っている。本格的な冬の到来を迎えて約一ヶ月。神田の視界を上から下へと、白い結晶が通過していく。それらは、ちらほらという量ではなかった。はっきり言って、どさどさという形容詞が相応しいほどの量だった。小さな神田の身体は、すでに太腿まで雪に埋まっている。後ろのファインダーは膝までだったが、大層動き辛そうだ。それなのに通信機の向こうの相手は、勝手な訴えを繰り広げてくる。
『神田君、まだー!? もう31日になっちゃったよー!』
「・・・・・・うるせぇ。こんなへき地の任務をよこしたのはてめーだろうが」
『神田君ならちゃっちゃと片付けられると思ったんだよ。イノセンスじゃなかったのは残念だけどね。まさかここまで大雪になっちゃうなんて』
「おかげでこっちはその大雪の中、AKUMAと無駄に戦うだけだったぜ」
『だからごめんって。ニューイヤーパーティーの準備は着々と進んでるからね。リナリーもおめかししてるから、早く帰って来てよ』
「雪と列車に言え」
『何が何でも今日中に帰ってくること! いい、これは命令だからね!? ローズクロスの権力で列車を動かして帰ってくるんだよ!』
「無茶言うな」
受話器の向こうでぎゃあぎゃあ喚いているのを無視して、通信を終わらせる。ファインダーたちは失笑していたが、彼らもパーティーに間に合いそうにないのが分かっているのだろう。残念ですね、という言葉を神田は無視した。
雪が降っている。駅は遠い。今日は12月31日、大晦日。くだらねぇ、と吐き出した溜息が神田の視界を白く濁した。





つーか、駅も見えねぇよ。
2008年3月23日