二時間目と三時間目の間
ぎゃあぎゃあとうるさい教室でよく寝れるものだ。そんな呆れ半分、感心半分の気持ちで、ミツルは机に突っ伏しているワタルを眺める。ミツルよりは濃いけれど、ほんの少しだけ茶色の髪が窓から差し込む日差しに照らされてつやつやと光っている。くうくうと聞こえてくる寝息は静かなもので、休み時間の教室では隣席のものにさえ聞こえないだろう。けれど前の席のミツルには確かに届いていた。のんきな奴、と肩を竦める。
今朝、教室で会ったときからワタルは眠そうに瞼を擦っていた。何でも昨日は帰ってくるはずの母親が時間になっても戻らず、携帯も通じずに、ずっと寝ないで待っていたのだという。実際は仕事がのびてしまい、建物の関係で電波が通じなかっただけらしいのだが、ワタルは心配で仕方が無かったらしい。母親も息子に心配をかけているんじゃないかと思っていたらしく、電波が通じるところに出て、ようやく連絡出来たのが夜の11時過ぎ。比較的早寝のワタルには、すでに起きているのが辛い時間だった。
でも、母さんに何もなくて良かった。ミツルにそう言って笑ったワタルは本当に心配していたらしく、うっすらと目も充血していたし、僅かだけれど隈も出来ていた。真面目な性格が災いして授業中に寝れないからこそ、休み時間に集中して睡眠時間を取り戻している。理由を知っているからミツルも邪魔はしていないのだけれど。
「・・・・・・暇」
ぽつりと呟き、ミツルはワタルの髪へと手を伸ばそうとする。けれど起きてしまうかとも思い、その手を止めた。別に起こしてもワタルは怒らないだろうけれど、自分の勝手で起こすのもどうかと思われたのだ。しかもその理由が暇だったからなんて、自分だったら不機嫌になることこの上ない。
仕方なしにミツルは図書室から借りてきた小説を広げ、適当に目を通しだす。人気作家のミステリーだが、内容はあまり頭に入ってこなかった。くうくうという寝息だけが、うるさい教室の中で何故か良く聞こえる。結局三分も読んでいることが出来ずに、ミツルは本を閉じた。自分自身に呆れ果て、深い溜息を吐き出す。
いつもはワタルと話しているから、休み時間なんてすぐに終わってしまうのに、彼が寝ているだけで暇を持て余してしまうとは。
「・・・・・・おまえのせいだぞ」
今度は手を伸ばし、ワタルの頬を引っ張った。けれどワタルはむにゃむにゃと口を動かすだけで、一向に起きようとはしない。これならさっきも遠慮なんかするんじゃなかった、とミツルはおまけに髪まで引っ張った。太陽を浴びて、それはとても温かい。
チャイムが鳴るまで後三分。今日の休み時間は長いな、とミツルは再度溜息を吐き出した。
仕上がってみたらミツワタに・・・? いえ、あくまで友情で!
2006年10月17日(2006年11月15日mixiより再録)