11.転がれ、未来
半兵衛が元就と、秀吉が元親と同盟を成立させたのと同じ頃。大阪城の留守を任された三成は、一人の侵入者を捕縛していた。天井裏にあった気配が慣れぬものだったため、長刀を振るって叩き落としたのである。豊臣軍は半兵衛の意向もあり、忍びをそれなりに多用している。けれど秀吉の気質から彼らを使い捨てるような真似はせず、仕事が違うだけの一人の兵として扱うことが専らだった。だからこそ気づいたのだろう。関節を取り、畳に押し付け、背に馬乗りになりながら三成は冷静に自身を分析する。眼下に広がるのは忍びには相応しくない派手な色合いの金髪だ。
「越後の忍びか」
噂に聞く忍んでない忍びの一人。未だ元服もしていない三成の捕えられたことを恥だと感じているのだろう。屈辱に歪んだ表情で、かすがは睨み上げてくる。その手からくないを弾き飛ばし、三成は拘束を解いて立ち上がった。怪訝な顔をするかすがの腹を蹴り飛ばして庭に落とし、転がる様を上から見下ろす。
「半兵衛様からの御命令だ。越後の忍び、もしくは甲斐の忍びが来たのなら命は取らずに返せと」
「なっ・・・!」
「戻って貴様の主に伝えるがいい。豊臣と毛利、長曾我部、島津の四ヶ国同盟は成立したとな。貴様ら東は勝手にするがいい」
ただし秀吉様と半兵衛様の邪魔をするのなら斬滅してやる。冷ややかに言い放つ三成に、かすがは蹴られた腹を腕で押さえながら眉を顰めていたけれども、これ以上ここにいては己の身が危ういと理解したのだろう。三成から視線を逸らさぬまま、その姿が掻き消える。遠ざかっていく気配に、三成は抜いていた長刀を鞘へと納めた。そして侵入を許した豊臣軍の忍び勢を一喝するべく歩き出す。
14歳三成とか考えただけで楽しすぎる。
2012年6月17日