「猫をつれて」エンド後のお話です。
わたしのうさぎ
この度引き取った姪が、白くてふわふわのものに良く目を留めることに気がついたのは、家具をそろえに近くのデパートに出掛けたときだった。
「亜莉子、それがほしいのか?」
「・・・え?」
振り向かれたので、ショーケースに並んでいる白い鞄を指差す。全体にファーを用いているそれは、やはり白くてふわふわだ。姪がさっき目を留めたシーツと同じく、コートと同じく、バスタオルや髪ゴムやクッションと同じく。
視線の先にあまりに「白くてふわふわ」があるものだから、てっきりそういった類が好きなのかと思ったのだが、どうやら無意識だったらしい。姪はきょとんと首を傾げた。
「遠慮するなよ? ほしいのかものがあるなら言っていいんだからな?」
「ありがとう、おじさん」
「そんなに白くてふわふわなのが好きなら、ぬいぐるみでも買ってやろうか? ほら、昔大好きだっただろう? 白兎とか」
一時期共に住んでいた頃に、そういえば姪は白兎という単語をよく口にしていた。白兎は優しいとか、白兎はふわふわだとか、白兎は温かいとか。
懐かしいなぁと思いながら顔を向ければ、姪は大きく目を見張っている。けれどすぐに首を横に振り、嬉しそうに笑った。
「ううん、いいの。私のシロウサギはもういるから」
「そうなのか?」
「うん」
姪はショーケースの鞄から離れ、歩き始める。
「私のシロウサギは一人だけ」
大好きなの、と姪は笑う。成長したとはいえ少女の横顔はあどけない。
「じゃあ猫のぬいぐるみを買ってやろうか?」
重ねて言えば、姪は今度こそ声を上げて笑った。
夢見る表情は昔とあまり変わらない。しかしとても幸せそうだったから、まあいいかとぬいぐるみ購入は諦めることにした。
猫はすでに飼ってます。今日は留守番の生首チェシャ猫。
2007年4月26日(2007年6月30日mixiより再録)