図書館で出会った、レヴィという名の少女。
長い黒髪を高い位置で二つに結わき、同じ色の瞳を瞬かせて笑う。
エドワードが図書館に行くと、彼女も同じように来ていて毎日顔を合わせた。
レヴィの借りる本は料理や恋愛小説が主で、それはエドワードの目にとても少女らしく映る。
幼馴染のウィンリィは、そういったものよりも機械鎧や医学を好むからだろう。
エドワードにとって、レヴィはとても『可愛らしい女の子』だった。
レヴィヤタン
場所はいつも、難解な蔵書で埋め尽くされている本棚の奥。
まるで隠されているように置かれているテーブルでエドワードは資料を広げ、レヴィはその向かいの席に座る。
彼女は小説を読んだり、外の景色を眺めていたり、することは日によって違った。
「エドは国家錬金術師だから、そんな難しい本が読めるのね」
今日のレヴィはお喋りをしたい気分らしい。
エドワードは基本的に集中しているときは周囲に何を話しかけられても答えないのだが、レヴィの声だけは不思議と彼の意識に滑り込んでくる。
そんな自分に苦笑して、エドワードは肩を竦めた。
「逆だよ、それ。こういう本が読めるからこそ、俺は国家錬金術師なんだ」
「あ、そっか。そうだよね」
「そうそう」
くすくす、と二人して笑い合う。
その様子を見ている者がいたら、きっと微笑ましさに頬を緩めただろう。
同じ年頃のエドワードとレヴィは、傍から見ていてとても仲睦まじく見えていた。
数日前に出会ったとは思えないほどの急速な親しみ。
その原因はレヴィ自身と、そして彼女に対してガードの低くなっている自分だとエドワードは感じている。
「レヴィは今日は?」
「あたしはこれ。『今日の献立1000種』」
「よく料理の本、読んでるよな。好きなのか?」
「―――うん」
はにかむように笑って、レヴィが言う。
「好きなの。・・・・・・だから今度、エドにお弁当作ってきてあげるね」
頬を染めたそれは、あまりにも可愛らしい、純粋な好意だけを含んだ笑顔だった。
エドワードは自分がレヴィに甘い理由を知っていた。
知っていて、そのままにしておいた。
金色の髪が窓からの光を受けて煌めく。
夕日を浴びて橙に染まる、その瞬間が一番綺麗。
真剣な表情で本に目を走らせているエドワードを眺め、レヴィは微笑した。
それはとても自然で、愛しい者を見つめる瞳だった。
午後五時の閉館時間を向かえ、エドワードは借りれる限りの本を貸し出ししてもらい、紙袋に詰める。
紙袋一杯になったそれに、レヴィは呆れながら「エドらしい」と呟いた。
「レヴィ、送ってく」
出会ってから毎回繰り返す言葉を、エドワードは今日も口にする。
レヴィは一瞬肩を震わせて、そして嬉しそうに目を細めた。これも、出会ってからずっと繰り返されている。
「・・・・・・ありがとう、エド」
隣に並ぶと、レヴィの方が少しだけ身長が高い。
少女を見上げなくてはならないことはエドワードのプライドに触ったが、けれどその首の角度が嫌いじゃなかった。
夕暮れの街を並んで歩く。
「明日、お弁当作ってくるね」
何がいい、と聞かれて、シチューと答えた。
笑い合う二人の姿は、本当に微笑ましいものだった。
2004年9月18日