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「いざ、勝負!」
そう言ってロイ・マスタング大佐は机を叩いた。





がんばれ、マスタング大佐!





「本日のメニューは肉じゃが・ブリの照り焼き・ほうれん草のおひたし・豆腐となめのこ味噌汁・白飯・漬物だ」
腕を組んでそう並びあげたロイの周囲で、東方司令部の面々が驚きの喚声をあげる。
「な、なんてお袋の味メニューなんだ・・・!」
「ま、まさか大佐がこんなものを作るだなんて・・・!」
「ひ、人は見かけによらないのか・・・!」
ホクホクと湯気を立てている料理の前に座っているホークアイ中尉とハボック少尉は、手を合わせて「いただきます」と挨拶して。
とりあえずは肉じゃがから。
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
沈黙の中で二人の咀嚼する音が響く。
「肉じゃがは合格」
ホークアイの一言にロイは舞った。



事の始まりは鋼の錬金術師、エドワード・エルリックの一言だった。
彼は言ったのだ。少しだけ照れ臭そうに笑いながら。
『俺、母さんみたいに料理の上手い人が好きだな』・・・・・・と。
こうしてロイは料理教室へと通い出したのである。



喜び舞っているロイをしり目にハボックはほうれん草のおひたしへと手を伸ばした。
野菜の触感を失っていない湯で加減に愛の偉大さを感じながらもコック・・・もとい、上司へと話しかける。
「大佐ー、これって醤油だけじゃないっすよね?」
「お、よく判ったな」
上機嫌なロイは満足そうな笑みを浮かべながら説明を継ぎ足す。
「かつお節でとった出汁と醤油を割ってあるんだ。ほうれん草自体も醤油絞りしてあるし、これなら血圧なども気にせずに食べれるだろう?」
「・・・・・・・・・大将ってまだ15歳じゃ?」
「鋼のが長生きするためなら私は何だってするよ」
熱烈な愛の告白なんだか、ベクトルの間違った努力なんだか知らないが、ハボックは適当に相槌をうちながらブリの照り焼きへと手を伸ばす。
そして一口食べて、「あれ?」と首をかしげた。
しかしそんなハボックよりも先に、ホークアイがコメントをして。
「大佐、ブリは醤油に漬けすぎです」
血糖値はイコールに。



二人のコメントをノートに書き込んでいるロイを眺めながら、ホークアイは軽くため息をついた。
「どうしてこの熱意が仕事の方向へ向かないのかしら」
「そりゃ無理な話っすよ。大佐に仕事させるなら大将でも目の前にぶら下げておかないと」
食後のお茶(もちろんロイが注いだもの)を飲みながら二人はのんびりと会話していて。
「エドワード君とアルフォンス君、今はどこにいるのかしら」
「一週間前までは北部だって言ってましたけど、今はどこでしょうねぇ」
探し物をしているエルリック兄弟は、情報さえあれば東から西へ、北から南へを繰り返している。
時折連絡は入るものの、居場所がつかめないのは日常茶飯事。
「自ら探しに行かないだけ良しとするべきね」
「一応、司令官っすから」
チラリと向けられる視線の先では、有能で出世頭で有名な国家錬金術師が料理の本を開いて四苦八苦している。
ホークアイとハボックは揃ってため息をつくのであった。



エルリック兄弟が東部に来るという予定は、今のところ無い。





2004年1月12日