気紛れでえげつないと仲間からさえ言われているエンヴィーにも、毎日欠かせずにしている日課がある。
それもお父様に言われたからではなく、自発的にしている習慣が。
そんな摩訶不思議な行為とは、以下のようなものだった。





オチビさん観察日記





○月×日 天気:オチビさんの髪と同じ色の太陽

今日は特にやることもなかったので、いつものようにオチビさんを見に行った。
オチビさんは図書館で借りてきた資料を、泊まっている宿屋で読んでいた。
髪を結んでなくて下ろしているオチビさんはめちゃくちゃ可愛かった。
とりあえず写真に撮っておいた。
いつもはいる弟の鎧がいなくて、オチビさんはずーっと本を読んでいた。
ごはんも食べないから宿屋の女将のふりしてケーキを差し入れしといた。
オチビさんは美味しそうに食べていた。
可愛かったから写真に撮っておいた。

ラストに命令されたグラトニーが写真を食いやがった!
別にいいもんねーネガは残ってるから!



○月□日 天気:オチビさんのコートと同じ色の夕焼け

今日は朝からオチビさんのところに焔の錬金術師が来やがった!
オチビさんが一生懸命に本を読んでるのが判んねーのかよ、あのアホが!
俺のオチビさんにベタベタしやがって!身の程を知れってんだ、あぁ!?
オチビさんがおまえなんかと釣り合うわけないだろ、ボケ!
ムカついたからちょっと殺人事件でも起こしておいた。
案の定、焔の錬金術師は部下に連れていかれた。
ざまーみろ!

その後はいつものように可愛いオチビさんを眺めていた。
うん、今日も写真に撮っておこう。でもって食われないようにしとこう。



○月△日 天気:オチビさんの服と同じ色の夜

オチビさんは弟と一緒にセントラルまで出かけていった。
何でも国家図書館にある珍しい資料を見せてもらえることになったらしい。
もちろんついていった。
資料を前にして目をキラキラさせるオチビさんはめちゃくちゃ可愛かった!
こんなことなら俺がいくらでも用意してあげるのに。あ、でもお父様にバレたらヤバイから止めとこう。
じゃーやっぱ違う方法でオチビさんを喜ばせてあげないとね♪
棚の一番上のところにある本に手が届かなくて困ってたから、職員のふりして取ってあげた。
お礼を言うオチビさんがなんか新鮮だった。
ちゅーしようと思ったけど、窓の向こうにラストとグラトニーがいたから止めておいた。
食われて堪るか。
とにかく今日もオチビさんは可愛かった。

ラストに明日は南部で仕事してこいって言われた。
ちくしょー自分がオチビさんを独り占めする気だな!
さっさと仕事を終わらして帰ってくるから待ってて、オチビさん!



○月◇日 天気:オチビさんの目と同じ色の星

南部で仕事。オチビさんに会いたい。
帰ってきたのも遅くて、オチビさんはもう寝てた。
(たぶん弟に寝ろって言われたんだ。じゃなきゃいつも起きてるのに)
動いてるオチビさんが見れなくて悲しかったけど、寝顔が可愛かったからいいや。
寝てるオチビさんはいつもよりちょっと幼く見えた。
もちろん写真を撮っておいた。第8冊目オチビさんアルバムもこれで終わり。
明日は朝一で新しいのを買いに行こう。

お休み、オチビさん。



○月◎日 天気:オチビさんの機械鎧と同じ色の曇り空

軍に見せてもらいたい資料があるらしくて、オチビさんは東方司令部に行った。
例のごとくすっげー邪魔な焔の錬金術師がいやがった。
なんであんな奴が大佐なんだか。人柱にするときは一番に使ってやろう。
もちろん俺のオチビさんは最後vそれまではずーっと可愛がってあげようっと。
オチビさんに纏わりつく焔の錬金術師がムカついたから殺したかった。
でもラストに止められた。だから虐めるだけにしといた。

「あら、もしかしてマスタング大佐じゃありませんか?」
「えぇ、私がそうですが・・・」
「お噂はかねがね伺っておりますわ。大佐は有名でいらっしゃいますもの」
「あなたのように美しい女性にそう言って頂けるとは恐縮です」
「無能で不能なマスタング大佐って」


めちゃくちゃショック受けてた!ざまーみろ!俺のオチビさんに近づいた罰だ!!
ちょっと奇麗な女だとすぐ笑顔浮かべて対応しやがって。オチビさん一筋の俺を見習え。
(でもやっぱいいや。オチビさんは俺のだし)
証拠写真をグラトニーに撮ってもらったから、これを餌にしばらくはオチビさんに近づかせないことにしよう。
脅迫状の書き方をラストに教えてもらうことにした。



○月*日 天気:オチビさんの涙と同じ感じの雨

今日は雨だった。だからオチビさんは大人しく宿でゴロゴロしてた。
自分の機械鎧をチェックした後で、弟の鎧を磨いてやってた。
お兄ちゃんなオチビさんもすごく可愛い。
オチビさんってブラコンだよなー。弟もそうだし。
でもまぁいいや。弟と一緒のときのオチビさんはよく笑うから。
鎧の弟もいつかは俺の弟になるんだし、殺したりはしないでおこうっと。
とにかく今日はゆっくり落ち着いてオチビさん観察が出来た。

脅迫状に焔の錬金術師がめちゃくちゃ慌ててるってラストが言ってた。
グラトニーに食べていいって言ったのに、ラストにやっぱり止められた。
隙を見て食べさせよう。



○月▽日 天気:オチビさんの笑顔と同じ感じの青空

もう我慢できない。会いに行く。
待っててオチビさん!

「オチビさん久しぶりーっ!」
「ゲッ!何でおまえがいんだよ!?」
「そんなのオチビさんに会いたかったからに決まってるじゃん!さ、デートしよ!ごはん食べに行こ!」
「何で俺がおまえなんかとデートしなくちゃいけないんだよ・・・」
「いいじゃん、今日限定の特大チョコパフェ奢ってあげるから!」
「・・・・・・・・・」
「はい決まりー!」




「エンヴィーの忍耐力はもって一週間みたいね・・・」
一週間ごとに会いに行く様子の書かれている日記を片手に、ラストは呆れたように溜息をついた。
その横では渡されたネガを大人しく食べているグラトニーがいて。
彼らの眼下では、優秀な人柱候補がエンヴィーによって連れ回されている。
おそらく鋼の錬金術師が人柱になるまで、エンヴィーの習慣がなくなることはないのだろう。
これが微笑ましいウロボロスの日常なのだった。





このお話は久住ざくろ様に献上しました。
2003年12月1日