外で待ち合わせをするのは少し苦手だ。
なぜなら、待ち合わせの相手が絶対に自分よりも先に来てるから。
よっぽど急な仕事でもない限り、必ず100%の確率で相手は約束の場所にいる。
この前ためしに30分早く来てみたときもそうだった。
その後に1時間早く来たときも、そのまた後に3時間早く来たときも。
絶対に相手は待ち合わせ場所で待っているのだ。
―――――奇麗な女性に話しかけられながら。
だから、待ち合わせは苦手。

それでも嫌いじゃないのは、自分を見つけたときの相手の表情が好きだから。





Yes, No, I love you.





今日も今日とて先に待ち合わせ場所にいたのはロイで、そして彼は数人の奇麗な女性に話しかけられていた。
けれど視線を感じたのか、ふと話しを止めてこちらを振り返る。
そして女性たちに何事かを告げると、まっすぐにこちらへ向かって来て。
本人に言ったらきっとつけあがるだろうから言わないけれど、エドワードはこの瞬間が好きだった。
この目の前の男が、自分のものなのだと感じられるから。
「やぁ、鋼の」
笑う顔は大人のもので、その度に少しだけ悔しくなる。
何だか自分ばっかり好きな気がする、とエドワードは思うのだ。
本当は、そうじゃないとは判っていても。



今日は非番だから軍服じゃないロイと、いつもどおり赤いコートを着たエドワードが並んで歩く。
もちろんロイは隣を歩く彼に歩幅を合わせて、そしてそれに気付いたエドワードは歩幅を広めて。
ロイはひどく嬉しそうに笑う。
「鋼の」
差し出されたのは、サラマンダーの刻まれた手袋ではなく、大きくて逞しい素肌の手で。
エドワードがほんの少しだけ眉をひそめて見上げた。
「転びそうだからね。見ているこっちが怖い」
「・・・・・・いいよ別に。子供じゃないし」
不貞腐れて差し出された手をペシッと叩くが、ロイはやはり笑うだけで。
「実際に君は子供だろう?」
「まぁ俺はピチピチの15歳だし?」
「私は男盛りの29歳だ」
「・・・・・・あぁ言えばこう言う。その減らず口、どうにかしろよな」
半ば呆れながらエドワードが肩を落とすと、今度こそロイは声を上げて笑った。
そしてもう一度、手を差し伸べる。

「だって素直に手を繋ぎたいと言っても、君は繋いでくれないだろう?」

思わず言葉につまってしまった。



自分より14も年上で。
顔だってよくって、身体はよく判らないけど悪くはないっぽくて。
地位だって権力だって金だってある。
女なんて選びたい放題だろうに、何で自分を選んだんだか。
エドワードは常々そう思っていた。
好きだけど、なんか悔しい。笑顔を見る度にいつもそう感じる。

なんだか大佐の手の平の中で恋愛してるみたいだ―――と。



いつまで経っても手を引く様子がないので、エドワードは自棄になりながら右手をパシッと勢い良く重ねた。
「・・・・・・せいぜい機械鎧でも握ってろ」
熱の伝わることのない手がせめてもの抵抗。
けれどロイが嬉しそうに目を細めて、感触など感じない右手をその温かい手で包むから、エドワードは驚いたように顔を上げて。
鋼の右手に口付けが落とされる。
感じるはずがないのに、全身が一気に熱くなった。
まるで忠誠を誓う騎士のように、ロイはエドワードを見つめて。
彼にしか見せない顔で、微笑んで囁く。



「たとえ機械鎧でも、君の一部なら愛しいことに変わりはないよ」



真っ赤になって俯いてしまったエドワードの金糸を見ながら、ロイは優しく微笑む。
そして柔らかく手を引いて歩き出した。
鋼の右手に少しでも自分の焔が移ればいい、なんて考えながら。

穏やかな一日は、こうして過ぎていくのだった。





この話は月城恵夢様に献上しました。
2003年11月14日